小論文は、ただの過去問ではありません。

そこには、いまの社会をどう見るか、どんな前提を疑うか、どの立場から問題を考えるかが詰まっています。

今回取り上げるのは、2019年度 鳥取大学 地域学部の小論文です。

テーマは「社会的包摂」。

貧困や格差は、単にお金が足りないという問題だけではありません。
人とのつながり、学ぶ機会、働く機会、そして「そこにいてもよい」と認められる場所を失っていくことも、社会的排除の大きな問題です。

では、誰もが社会の一員として存在を認められ、自分の価値を発揮できる社会をつくるには、何が必要なのでしょうか。
この問題は、貧困、教育格差、地域社会、子どもの居場所、社会的孤立など、現代社会のさまざまな課題につながっています。

 

GV小論文ジャーナルでは、過去問の解答例を通して、社会の見方・考え方を読んでいきます。

2019年度 鳥取大学 地域学部 小論文解答例 社会的包摂

今回の問題

2019年度 鳥取大学/地域学部

次の文章を読んで設問に答えなさい。

出典は阿部彩『弱者の居場所がない社会ー貧困・格差と社会的包摂ー』。

問一

「社会的包摂」とはどのような考え方や取り組みであるのか、簡潔に要約しなさい。(400字以内)

解答例

 社会的包摂とは、社会的に排除されていない状態であり、社会的排除の対概念である。社会的排除とは、金銭的・物品的な資源の不足だけを問題視するのではなく、その不足をきっかけに社会の仕組みから脱落し、人間関係が希薄になり、社会の一員としての存在価値を奪われていく状態を問題とする。また社会的排除とは、単なる社会的孤立、つまり友人、知人、家族が少ないという状況を指すだけではなく、社会とつながり自分の存在価値を発揮できる機会、さらには「そこにいてもよい」と社会から認められる場所さえ奪われている状況を含む概念である。それに対して、私たちは本来、家族、学校、会社、地域など幾重もの小さな社会に包摂されながら生きている。社会的包摂とは、人がそうした社会の中にいるのが当然とされ、そこで自分の価値を発揮し、互いの存在意義を承認し合う状態であり、特に雇用政策において人々の就労を質量共に担保していくことが重要となる。(400字)

問二

現代社会では、経済的格差や社会的孤立の広がりの中で、様々な形で社会的に排除された人々が生み出されている。そこで、地域社会において実際に生じている社会的排除の事例をひとつ取り上げるとともに、その問題の克服に向けて求められる社会的包摂のあり方について論じなさい。(800字以内)

解答例

 ここでの社会的排除の事例として、私たちに身近な沖縄の進学状況における貧困層の「排除」を取り上げたい。前提として、私は沖縄でも有数の進学校に通い大学受験を目指している。そのために塾や予備校にも通い、自分なりの努力を続けてきたわけだが、一方で家族をはじめとした周囲の経済的・精神的な支えがそれを可能にしてきたのだ。沖縄県は子どもの相対的貧困率が3割程度あり、全国平均の2倍を超える。その背景には子どもを養育する親の雇用の不安定さや母子世帯の多さがあると言われている。その場合、幼少期の子どもは、経済的かつ社会関係資本において恵まれた家庭と比べて、どうしても学習状況が遅れる可能性が高くなる。しかも初期の遅れは上位の学級に進むにつれて拡大すると考えられる。もちろん学校の学習が困難で進学校に進まない子どもも地域などで友人関係を築いたり、学力では測れない才能を発揮する場合もあるだろう。ただ、すべての子どもが早くから自分の特性に気づき、それを自力で伸ばせるわけではない。進学校から大学へと進学することは、自分の特性を時間をかけて見極め、その間に新しい社会関係資本を築いていく機会を得る、ということでもあるのだ。この意味で、相対的貧困状態にある子どもの多くは、こうした機会から「排除」されていると言えよう。

 こうした「排除」を克服する上で、まず子どもの問題を自己や家庭の責任として押しつけず、社会の未来を築いていくすべての子どもに対して、その社会が責任を担うという態度を基調とすることが肝要である。そして、この点から相対的貧困状態にある子どもとその親への両面からの社会的包摂が求められる。具体的には、子どものサードプレイスの拡充、その能力評価の多軸化、保育士・幼稚園教諭の専門高度化、親の子育て「語り場」の公的運営など、子どもとその親が自己を自由に表現し、承認し合う場を設けていくことが必要ではなかろうか。(800字)

 

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