小論文は、ただの過去問ではありません。
そこには、いまの社会をどう見るか、どんな前提を疑うか、どの立場から問題を考えるかが詰まっています。
今回取り上げるのは、2024年度 琉球大学 人文系の小論文です。
テーマは「相対主義と普遍主義」。
「正しさは人それぞれ」「みんな違ってみんないい」。
一見すると寛容で優しい言葉に見えますが、意見が対立したとき、それだけで社会は本当に成り立つのでしょうか。
多様性を尊重しながら、共に生きるための「正しさ」をどう作っていくのか。
この問題は、文化、宗教、ジェンダー、地域社会、グローバル化など、現代社会のさまざまな課題につながっています。
GV小論文ジャーナルでは、過去問の解答例を通して、社会の見方・考え方を読んでいきます。
2024年度 琉球大学/人文系
以下の文章は、山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?相対主義と普遍主義の問題』からの抜粋である。この文章を読み、次の問に答えなさい。
出典は山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか?相対主義と普遍主義の問題』。
この文章で筆者はどのようなことを主張しているか。その論旨を示した上で、その主張に対するあなた自身の意見を、何らかの具体的な事象を取り上げながら、1000字以上1200字以内で述べなさい。
「正しさは人それぞれ」「みんなちがってみんないい」といった考え方は相対主義である。その立場にたつと、両立しない意見の中から一つに決めなければならない場合、現実の世界で権力を持つ人の考えが通ることになる。それは結果的に多様性を切り捨て「力こそ正義」に陥ることになる。一方で「客観的で正しい答えがある」という考え方を普遍主義という。しかし、その「客観性」を担保するはずの科学も、現在問題になっていることについては相対的な「正しさ」しかもたないため、権力によって恣意的に利用されやすい。そこで筆者は、「正しさ」とは人間の生物学的特性を前提としながら、人間が他者との関係の中で作っていくものだ、と捉え直す。その過程で人間は学び、成長するのである。
こうした筆者の主張に対して、「みんなちがってみんないい」という声が、社会のマイノリティの立場から発せられることの正当性を、まず確認したい。社会の同調圧力に抗して、たとえば伝統的なジェンダー規範に抗して、女性や性的マイノリティが自由な生き方を主張する声は擁護されなければならない。相対主義の正当性は、それが主張される立場や状況によって変わってくるのである。その上で、「正しさ」が公正な社会を成り立たせるために不可欠であり、社会の広がりや深化に応じて対話を通じて更新されなければならないという意味で、私は筆者の主張に同意する。
現在、日本も含め社会のグローバル化が進行し、外国人との共存が求められている。一方で、それは深刻な文化衝突を引き起こすことも多く、とくに生活習慣の違いが宗教的な「正しさ」に起因するため、乗り越えることが困難だと思われている。しかし本当にそうだろうか。たとえばイスラム教の女性の多くはヒジャブで身体を覆っており、私たち日本人はその教えに女性抑圧的なものを読み取りがちだ。しかし実際は、イスラム教の信仰にも国や地域、個人レベルで濃淡があり、ヒジャブの着用の仕方も多様である。地域によっては習慣としてヒジャブが着用されるが、それは同時に女性の自己表現の手段として選ばれることもあるのだ。そうした視点は翻って、私たちの生活習慣における自明性を掘り崩す。私たち日本人が初詣や七五三を神前で、時に伝統衣装を着て祝うのも、私たちにとっては習慣に過ぎないが、外国人から見れば敬虔な宗教的行為に映るのではないか。
私たちが外国人をはじめ多様な存在と共生する上で、相互の文化を尊重すると同時に、共通の作法や理念を共有する必要がある。それを可能にするのが対話である。対話はスムーズに一意的な結論をもたらさないかもしれないが、その過程を通じて互いの違いを知ると同時に、自己を知り、さらに互いの「共感の根」を掘り当てることになる。そこから少しずつ、コミュニティに共有される「正しさ」が花開かせるのではないだろうか。(1197字)

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