〈本文理解〉

出典は夏目漱石「子規の画」

問一「下手いのは病気の所為だと思いたまえ」(傍線部ア)にあらわれた子規の心情について説明せよ。(2行)

 

〈GV解答例〉
予め注釈で言い訳し強がることで、自らも自覚している画の拙さからくる照れを隠すとともに、漱石が見た時の失望感を和らげようとする心情。(65)

〈参考 S台解答例〉
遠く離れた友人に贈るため懸命に描いた自らの画の拙さに気恥ずかしさを覚え、自身の病にことよせてそれを取り繕おうとしている。(60)

〈参考 K塾解答例〉
自分の画の拙さを自覚し、それを病身のつらい姿勢によるものだと言い訳しつつ、友である漱石に懸命に描いたことをわかってもらおうとする心情。(62)

〈参考 Yゼミ解答例〉
自分でも拙さを隠せない絵を贈るに際して、慣れない絵の不出来を自らの病気のせいと釈明することで、漱石の寛大さを頼もうとしている。(63)

〈参考 T進解答例〉
遠地の友に贈るために懸命に描いた画の拙さを自覚しつつも、それが病苦を押して描いた困難さゆえであることを、言い訳めいても伝えておきたいという心情。(72)

問二「いかにも淋しい感じがする」(傍線部イ)とあるが、それはなぜか、説明せよ。(2行)

 

〈GV解答例〉
子規の画の図柄と色使いの単調さ、背景と表装の色調の冷たさからくるもの哀しさに加えて、その画が亡友を思い出す際のよすがでもあるから。(65)

〈参考 S台解答例〉
子規の画は色彩に乏しく素朴で淡白なものであり、そこに死が迫り友の帰郷を願う子規の孤独と哀しみが重なるように思われたから。(60)

〈参考 K塾解答例〉
亡き友の送ってくれた画は、一輪ざしの東菊を白地に少ない色数で生真面目に描いたものであり、寒々しい藍色の表装とも相まって物悲しさを感じさせたから。(72)

〈参考 Yゼミ解答例〉
三色しか使われておらず、花一輪、蕾が二つ、葉が九枚という簡素な図が白を背景に描かれ、その上、寒色である藍色で表装されていたから。(64)

〈参考 T進解答例〉
画中の色の数の少なさや表装の藍色の冷たい印象のせいもあるが、愚直に、根気強く描いたはずの花や葉は僅かで、病でそれ以上描けなかったように思われたから。(74)

問三「余は微笑を禁じ得ないのである」(傍線部ウ)とあるが、それはなぜか、説明せよ。(2行)

 

〈GV解答例〉
優れた句を容易く生み出す俳人としての才は勿論、人間としても非のつけ所がない子規が、意外にも一枚の画に苦闘している痕跡を認めたから。(65)

〈参考 S台解答例〉
写生を唱え文学には鋭敏な才覚を見せた子規が、画ではそうはいかず、愚直なまでに苦闘する姿がその画面から偲ばれたから。(57)

〈参考 K塾解答例〉
何事も器用にこなし、見事な句や歌を無造作に作った子規が、手慣れぬ画に関しては根気よく愚直に描くしかなかったところに、むしろ好ましさを感じたから。(72)

〈参考 Yゼミ解答例〉
俳句では軽々と自在に作品を作り上げる才能をもった子規が、こと画作に関してはその才能を発揮できなかったことをむしろ好ましく思ったから。(66)

〈参考 T進解答例〉
俳句や歌なら溢れる才能に任せて無造作に創作をなしえた子規が、慣れない画では筆が自在には動かず、愚直に、根気強く描くしかなかったことが可笑しかったから。(75)

問四「淋しさの償いとしたかった」(傍線部エ)にあらわれた「余」の心情について説明せよ。(2行)

 

〈GV解答例〉
子規の残した画に意外な人間味を見出して可笑しみを感じたことが、逆に子規の不在を強く印象づけ、尽きることない淋しさを感じている心情。(65)

〈参考 S台解答例〉
病のために大胆に発揮されることのなかった子規の愚直さをいとおしみ、多くの才能を示しながら若くして世を去った友を悼んでいる。(61)

〈参考 K塾解答例〉
子規が病床で描いた寒々しい印象の画に図らずも表れた「拙」という新たな可能性を切り開き、それを様々な面で開花してほしかったと、亡き友を哀惜する心情。(73)

〈参考 Yゼミ解答例〉
生前には俳句の才に溢れ、およそ拙とは無縁だった彼の形見の絵がいっそもっと拙ければと述べることで、亡き子規への追慕の思いを込めている。(66)

〈参考 T進解答例〉
何でも上手くこなす才能を持ち、初めて画において拙なる一面を見せたが、その新たな魅力を存分に発揮する前に病のために若くして世を去った友を哀悼する心情。(74)