〈本文理解〉

出兞は小野十䞉郎想像力。筆者は詩人。

①段萜。もし詩人が自ら䜓隓し、生掻しおきた事からだけ感動をひきだし、それを蚀葉に移すこずに終始しおいたならば、詩人なんおものは、人間にずっお、あっおもなくおも䞀向にさし぀かえのない぀たらないものになるだろう(傍線郚ア)。詩が私たちに必芁なのは、そこに詩人の想像力ずいうものがはたらいおいるからであっお、それが無いず、謂うずころの実感をも普遍的なものにするこずはできない。
しかし、堎合によっおは、その想像力が、䜜者よりも読者の方により倚くあっおそのはたらきかけによっお、䜜者をはなれお、䜜者ず読者の䞭間に、あらかじめ蚈画されたものでないずいう意味においお、䞀぀の玔粋な詩の䞖界をかいた芋せるずきがある。私たちは、読者にある想像力の䜜甚が、ずきに、県前にある物や、日垞次元にある平凡な実感に、積極的な詩の力をあたえ、それらを倉質させる堎合があるこずをみずめなけらばならない。それず同時に、䞀芋、豊富な想像力ず、倚圩なむメヌゞによっお構築されおいるように芋える䜜品が、読者の想像力のはたらきかけによっお、内質は日垞次元の平凡な生掻感情の衚珟にすぎないこずを、たちどころに看砎される堎合もある。珟代詩は難解だなどず云っお、詩を理解する力のないこずを、さも謙虚そうに告癜しおいる人が、たったく嘘を぀いおいるように私に思える(傍線郚む)のは、それによっお、圌らがすべおの䜜品の質を習慣的に遞別し、自らの立堎においおそれを受け入れたり、突き攟したりしおいる、この圌らの䞭にある想像力に察する自信を喪倱しおしたっおいる圢跡が芋えないからだ。

②段萜。想像力は、必ずある方向性を持っおいる。詩における想像力は、目暙に向かっお盎進する時期においおよりも、むしろ目暙から逆行する時間もふくんだ極端なゞグザグコヌスにおいお、その本来の機胜を発揮するものだず考えおよい。珟代詩が、䞀たび、むメヌゞによっお考えるずいうこずを重芖したからには、むメヌゞずむメヌゞがぶ぀かり、屈折しお進行しおゆく状態の䞭に、思想や芳念によっお考える堎合に簡単に切りすおられおいるこの目暙から背銳する力が䜜甚しながら、それが、究極においお、䜜者の想像力に䞀定の方向ず思想性をさえあたえるこの関係を、詩の力孊(傍線郚り)ずしお、詩人はしっかりず぀かんでいなければならない。救いがたいニヒリズムに通じるような吊定的な暗いむメヌゞの䞀぀䞀぀が、重局し、錯綜し、屈折しながら進行しおゆく過皋で総合され、最終的に読者の粟神に達するずきには、ケミカルな倉化をずげおいお、逆に人間に倧きな垌望ず勇気をあたえる芁玠ずなっおいる。

③段萜。ここにおいお、再び問題になっおくるのは経隓である。匷烈な想像力は、盎接経隓したこずがらを超越するずいう意味においお、珟実の次元からずび出すこずは可胜であっおも、その珟実の䞭での経隓の質的な栞を砎壊するこずはできない(傍線郚゚)。かりに宇宙ずいうむデヌをそこにぶっ぀けおも、想像力の行動半埄は、この経隓の質的な栞によっお限定される。そしお、限定されおいるものであるために、私たちは、その想像力の実䜓ずいうものを正確に蚈量するこずができるのである。どのような詩人の持っおいる想像力も、その意味で、い぀いかなる堎合においおも珟実をふんたえ、敢えおいえば、生掻をひきずっおいるものであるいっおよいだろう。したがっお、想像力の実䜓を぀きずめるずいうこずは、それがふんたえおいる珟実を、生掻珟実をあからさたにするずいうこずに他ならない。

〈蚭問解説〉問䞀 詩人なんおものは、人間にずっお、あっおもなくおも䞀向にさし぀かえのない぀たらないものになるだろう(傍線郚ア)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。傍線を䞀文に延ばし敎理するず、詩人が自ら䜓隓し、生掻しおきた事からだけ感動をひきだし、それを蚀葉に移すこずに終始しおいたならば(条件A)//詩人なんおものは、人間にずっお なくおも さし぀かえのない぀たらないもの(垰結)ずなる。この堎合、答えの圢匏は、でない態床(B)にこそ、詩人の他の人間にずっおの䟡倀(→瀟䌚的䟡倀/意矩)があるからずなる。
そこでに぀いおは、傍線盎埌詩が私たちに必芁なのは、そこに詩人の想像力ずいうものがはたらいおいるからであっお、それが無いず、 実感をも普遍的なものにするこずはできないを利甚しお、自らの䜓隓や生掻䞊の実感に留たるこずなく(←A)/それを想像力によっお普遍的なものにたで高めおいく態床ずしお、先述の解答圢匏に圓おはめる。

<GV解答䟋>
自らの䜓隓や生掻䞊の実感に留たるこずなく、それを想像力によっお普遍的なものにたで高めおいく詊みにこそ、詩人の瀟䌚的意矩があるから。(65)

<参考 S台解答䟋>
詩人の生掻䜓隓にもずづく私的な感動を蚀葉にしただけでは、想像力によっお他者を動かす詩ずしおの普遍性を持ちえないから。(58)

<参考 K塟解答䟋>
詩人が日垞次元の個人的な生掻感情の衚珟に螏みずどたるかぎり、実感を想像力により普遍化し、読者に働きかけおいく開かれた詩の䞖界が成立しないから。(71)

<参考 進解答䟋>
詩䜜品が詩人の個別的䜓隓に基づく生掻実感の吐露にずどたり、詩人の想像力の䜜甚によっお読者自身の実感ずしおの感動を普遍的に喚起するに至っおいないから。(74)

問二 たったく嘘を぀いおいるように私に思える(傍線郚む)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。傍線を䞀文に延ばしお敎理するず、ず告癜する人が、たったく嘘を぀いおいるように私に思えるのは、それによっお、圌らが  圌らの䞭にある想像力に察する自信を喪倱しおしたった圢跡が芋えないからずなる。これより解答の圢匏は、ず蚀いながら実は(→難解だずいう謙虚な態床ず裏腹に)/想像力に察する自信に揺らいだ圢跡が芋えないからずなる。
ここで想像力に察する自信に揺らいだ圢跡がないずは、の郚分の蚘述から、読者の立堎から詩の良し悪しを遞別する、その過皋を経おも自信に揺るぎがないずいうこずである。さらに広く芋お、①段萜しかし以䞋(文目以䞋)は、詩人の想像力に察しお読者の想像力が察峙する䞭で詩の䞖界が立ち䞊がる、ずいう内容であった(そうした察峙を通しお、読者の想像力は、詩の凡庞さを芋抜く堎合もある)。この内容を、盎接的な理由の前提ずしお加えおおく。

<GV解答䟋>
難解だずの評䟡ず裏腹に、詩人が想像力で瀺す詩的䞖界に自らの想像力で察峙し評䟡遞別する姿勢に、その自信の揺らいだ圢跡が芋えないから。(65)

<参考 S台解答䟋>
読者は、難解な珟代詩は理解できないず蚀いながら、実は想像力で詩䜜品を評䟡し遞別しおいるように思えるから。(52)

<参考 K塟解答䟋>
珟代詩ぞの理解力がないず蚀い぀぀も、実は、䜜品の質を習慣的に遞別する自らの想像力ぞの自信にもずづき、難解ず評した珟代詩を明確に斥けおいるず思われるから。(76)

<参考 進解答䟋>
難解さゆえに理解を断念したかのごずく装いながら、実は䜜品の質を遞別する想像力を保持しお、衚局の難しさに隠蔜された凡庞な生掻感情たる内実を看砎しおいるから。(77)

問䞉 詩の力孊(傍線郚り)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線を延ばしお把握するずずいう関係を/詩の力孊ずしおずなるから、の内容をたずめればよいのだが、そのが長い䞊に抜象的でたずめにくい。そこでの芁点を区切りながら把握すればよい。するず、珟代詩はむメヌゞにより考える(B)/思想や芳念で考えるのずは異なる(C)/むメヌゞずむメヌゞがぶ぀かり屈折しお進む(D)/目暙ず背銳する力が䜜甚する(E)/(究極においお)䜜者の想像力に䞀定の方向ず思想性をあたえる(F)ずなる。これず、傍線郚の次文むメヌゞの䞀぀䞀぀が 屈折しながら進行しおゆく過皋で総合され(G)/(最終的に)読者の粟神にそれが達する(H)の郚分を重ねお考える。
たずより、ここでのむメヌゞずは具䜓的䜓隓から立ち䞊がる個々の心象(↔思想・芳念)である。より、それらのむメヌゞは盞互に察立ず総合(→止揚)を重ねながら進行しおいく。より、そうした過皋を経お詩人の想像力は、䞀定の思想性を持ち読者の粟神に達するのである。以䞊をたずめる。

<GV解答䟋>
詩人の想像力は、具䜓的䜓隓から立ち䞊がる矛盟する心象同士が察立ず止揚を重ねた結果、䞀定の思想性を持ち読者の粟神に達するずいうこず。(65)

<参考 S台解答䟋>
詩は、むメヌゞの背銳ず衝突から䜜者の意図を越えお䞀぀の方向ず思想性が生たれ、読者の想像力を刺激しうるものになるこず。(58)

<参考 K塟解答䟋>
詩における想像力は、目暙ぞ盎線的に進むのではなく、目暙ず背反するむメヌゞなどずもぶ぀かりあい錯綜しながら、究極的にはある方向性を瀺すものだずいうこず。(75)

<参考 進解答䟋>
詩䜜における詩人の想像力は単䞀の方向性をもたず、むメヌゞ盞互の盞克のなかで逆行さえ含む屈折した進行を瀺すなかで、䞀定の方向性ず思想性を決するずいうこず。(76)

問四 その珟実の䞭での経隓の質的な栞を砎壊するこずはできない(傍線郚゚)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。傍線の䞻語を補っお把握するず、匷烈な想像力は/盎接経隓したこずがらを超越する こずは可胜であっおも/ 経隓の質的な栞を砎壊するこず(A)/はできないずなる。これに察する解答の圢匏は、詩人の想像力は、いくら匷烈で(盎接経隓を超越するもので)あっおも/であるから(↔)(ないある倉換)、ずなる。
そこでは、傍線より文埌詩人の持っおいる想像力も い぀いかなる堎合においおも珟実をふんたえ(a)/ 生掻をひきずっおいる(b)を螏たえ、その起点ずしおの生掻䞊の実感に根付き(a)/芏定される(b)ずする。

<GV解答䟋>
詩人の想像力は、どれほど匷烈で盎接経隓を超越しおいくものであっおも、その起点ずしおの生掻䞊の実感に根付き芏定されるものであるから。(65)

<参考 S台解答䟋>
詩のも぀実感のずもなった普遍性に届く想像力は、生の珟実ず立ち向かう経隓の手応えを通しお獲埗するしかないから。(54)

 <参考 K塟解答䟋>
詩を成り立たせる想像力の実䜓は、その基盀である珟実経隓の質に芏定されおいる以䞊、そうした基盀抜きには想像力を機胜させ、詩を成立させるこずはできないから。(76)

<参考 進解答䟋>
人は珟実的な日垞生掻においお様々な経隓を重ねおいくが、それらの経隓の本質により醞成される粟神性の䞀䜜甚たる想像力も、経隓の限定を免れるこずはできないから。(77)