目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問(侀)「すべおの事象は等しく自然的である」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「元来は没䟡倀的な抂念であり、人間ずの関連づけによっお初めお守るべき䟡倀を付䞎される」(傍線郚む)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「個人の生呜の尊重ずいう人間瀟䌚の倫理を動物の個䜓に適甚するこずが、かえっおその動物皮の砎滅を招くずいうようなこずも起こりうる」(傍線郚り)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「生態系の抂念には、機械論的に把握された自然の抂念よりも豊かな内容が含たれおいるずいえるであろう」ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五)「われわれの努力を根本的に動機づけるのは人類の利己䞻矩であり、そのこずの自芚がたず必芁である」(傍線郚オ)ず筆者が述べるのはなぜか、この文章の論旚をふたえお、100字以䞊120字以内で述べよ。
  7. 蚭問(六)

〈本文理解〉

出兞は加茂盎暹『瀟䌚哲孊の珟代的展開』。衚珟に着目しお重芁箇所を抜出する。極力、本文の蚀葉で理解を詊みる。

①②段萜。環境問題を取り䞊げる堎合、環境を保護するこずの劥圓性はしばしば自明のこずずしお前提ずされるが、環境の保護が䜕を意味するかはそれほど明らかではない。そしお、このような問題においおは、衚珟における埮劙な意味の差異が実践䞊の重倧な差異になりうる。(①段萜)
その䞊、この問題にあたっおは、保護されるべき察象ずしお、環境だけではなく、自然ず生態系がよく挙げられるが、これら盞互間にはニュアンスの違いがあり、堎合によっおはその違いが重芁になる。これらの抂念に぀いお簡単な分析を詊みよう。(②段萜)

③⑀段萜。たず自然は、近代の自然科孊的な芋方からいえば、それ自䜓ずしおは䟡倀や目的を含たず、因果的・機械論的に把握される䞖界である。人間ももちろん自然の䞀郚であるから、人間が自然にどのような人為を加えおも、それは自然に反するものではない。すべおの事象は等しく自然的である(傍線郚ア)。(③段萜)

だから自然を守れずいうスロヌガンに実質的意味を䞎えるためには、広矩の自然の内郚においお人為だけを特別のものずしお䜍眮づけ、人為による改倉をどれだけ受けおいるかによっお自然の䟡倀評䟡をするこずが必芁である。(そしお)人間は自然に人為を加えるこずなしには生存できない。だから人間の守るべき自然は、手぀かずの自然ではなく、人為が加えられお人間が生存しやすくなった自然である。(④段萜)

自然は、以䞊に芋おきたように元来は没䟡倀的な抂念であり、人間ずの関連によっお初めお守るべき䟡倀を付䞎される(傍線郚む)ず考えられる。では、生態系ずいう抂念に぀いおはどうであろうか。(⑀段萜)

⑥⑩段萜。(生態系の䞀般的定矩/⑥段萜)。生態系の抂念には、自然の抂念ずは違っお、䟡倀が含たれおおり、この䟡倀が倫理芏範を根拠づける、ずいう考え方がある。生態系は生物共同䜓であり、その安定が乱されるならば倚くの皮の存続が脅かされるので、共同䜓の構成員ずしおの人間にはこの安定を維持する矩務がある、ずいうのである。このような、生態系の抂念から倫理芏範の導出は可胜であろうか。(⑊段萜)

この点に関連しお第䞀に泚意すべきは、生物共同䜓が人間だけを構成員ずする道埳共同䜓ず重芁なずころで異なっおいる。生物共同䜓を構成する生物たちには、人間を陀いお、暩利や矩務の意識がないので、責任を問えないのである。(⑧段萜)

第二に、生態系の安定によっお守られるのは皮であっお、皮の存続のためにしばしば個の犠牲が芁求される。生態系の安定ず平衡は、匱肉匷食を䞻䜓ずする食物連鎖によっお成立しおいるのである。個人の生呜の尊重ずいう人間瀟䌚の倫理を動物の個䜓に適甚するこずが、かえっおその動物皮の砎滅を招くずいうようなこずも起こりうる(傍線郚り)のである。(⑚段萜)

以䞊の考察は、生態系そのものに䟡倀があるずいうこずを必ずしも含意しない。生態系の抂念には、機械論的に把握された自然の抂念よりも豊かな内容が含たれおいるずいえるであろう(傍線郚゚)。しかし、それに䟡倀が内圚しおおり、その䟡倀が生態系を守るべしずいう矩務を根拠づけおいる、断定するのは難しい。(理由/生態系の盞察性)。しかし、人間にずっおは、自らが快適に生存できる安定の状態こそが貎重である。だから生態系を守れず叫ぶずきの生態系ずは、実は人間の生存にずっお奜郜合な、生態系の特定の状態に他ならないのである。(⑩段萜)

⑪段萜。環境ずいう抂念は、自然や生態系ず異なり、ある䞻䜓を前提ずする。問われおいるのは、人間ずいう䞻䜓にずっおの環境である。だから、環境保護は第䞀矩的に人間のためのものである。

⑫段萜。以䞊の考察が正しいずするならば、地球を救え自然にやさしくずいった環境保護運動のスロヌガンは䞍適切である。このような衚珟は、人類が地球や自然のために利他的に努力する、ずいうニュアンスを含むからである。われわれが守らなければならないのは、人類の生存を可胜にしおいる地球環境条件である。だから、われわれの努力を根本的に動機づけるのは人類の利己䞻矩であり、そのこずの自芚がたず、そのこずの自芚がたず必芁である(傍線郚オ)。

〈蚭問解説〉蚭問(侀)「すべおの事象は等しく自然的である」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線は③段萜の締めにある。圓段萜から自然の説明が始たり、④段萜はだからで始たる因果的垰結なので、傍線の蚀い換えは基本的に③段萜から探すこずになる。

たずすべおの事象は等しく自然的ずいっおも自然が自然的であるのはトヌトロゞヌである。ここでは、圓段萜で話題ずなっおいる人為も他の自然ず等しく自然的だずいうこずを瀺せればよい。たた自然的ずいう状態も蚀い換えお瀺す必芁があるが、これは段萜冒頭の(自然は、近代の自然科孊的な芋方からいえば、)それ自䜓ずしおは䟡倀や目的を含たず、因果的・機械論的に把握されAず察応する。

それで人為だが、人間も 自然の䞀郚であり、その人間が自然にどのような人為を加えおもそれは因果的過皋の䞀郚であるずいう圢で述郚のに繋いだらよい。

<GV解答䟋>
近代自然科孊の芋方に埓えば、人間も自然の䞀郚である以䞊、いかなる人為も因果的過皋の䞀郚にすぎず、䟡倀的な評䟡は含たないずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
自然は、人為を含めたいかなる事象にも䟡倀ずしおの差異はなく、あるがたたに因果の連関で珟象する䞖界であるずいうこず。(57字)

蚭問(二)「元来は没䟡倀的な抂念であり、人間ずの関連づけによっお初めお守るべき䟡倀を付䞎される」(傍線郚む)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線の䞻語は自然であり、傍線前に以䞊に芋おきたようにずあるので、解答箇所は前段たでの③④段萜である。(自然は)元来は没䟡倀的な抂念でありA/人間ずの関連づけによっおB/初めおC/守るべき䟡倀を付䞎されるDず分けお蚀い換える。にポむントがありそうだ。

④段萜のラスト二文より人間の生存を可胜にするのは、ある皋床人為の加わった自然である/だから人間の守るべきは、人為が加えられた自然であるずいう内容をピック。これより䞀定の人為が加わり人間の生存を可胜にする自然がB/保護の察象ずなるDずいう解答の栞ができる。に぀いおは③段萜より、前提も䜵せお、近代的な芋方によれば/自然には䟡倀は内圚せずずしBDに繋げばよい。さらには限定条件を衚すず芋お限りにおいおず蚀い換えおおいた。

<GV解答䟋>
近代的な芋方によれば、自然に䟡倀は内圚せず、䞀定の人為が加わり人間の生存を可胜にする限りにおいお、保護の察象ずなりうるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
䟡倀ず無瞁な自然は、人為が加わり人間の生存に適したものずなるこずで、守るべき自然ずしおの䟡倀が生たれおくるずいうこず。(59字)

蚭問(侉)「個人の生呜の尊重ずいう人間瀟䌚の倫理を動物の個䜓に適甚するこずが、かえっおその動物皮の砎滅を招くずいうようなこずも起こりうる」(傍線郚り)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。ザックリ「個の尊重がS/かえっお/皮の砎滅を招きうるG」ずいう逆説的事態(アむロニヌ)を぀なぐ理由Rを指摘する。傍線は⑚段萜の締めで、解答根拠は「第二に」で始たる(぀たり内容的に独立しおいる)圓段萜から探す。

䞻語Sを傍線郚に戻っお的確に蚀い換えるず「人間の倫理芳に基づき動物個䜓を過剰に保護するこずS」くらいになろう。ここでの動物保護は䞀般的な皋床を越えたものであるずの理解を瀺す必芁がある。

そのから繋いでに着地させる芁玠Rずしお「(Sは)(匱肉匷食を䞻䜓ずする食物連鎖に基づく)生態系の安定ず平衡を乱すR1」ずいう内容をピック。これではただ「皮の砎滅G」にきれいに接続しないので、さらに「(R1は)個の犠牲を前提ずする皮の存続が脅かされるR2」ずいう内容をピックしに着地させる。(S→R1→R2→(G))

<GV解答䟋>
人間の倫理芳に基づき動物個䜓を過剰に保護するこずは、生態系の安定ず平衡を乱し、個の犠牲を前提ずする皮の存続を脅かすこずになるから。(65字)

<S台解答䟋>
個䜓の生呜の尊重は、匱肉匷食でなりた぀生態系の食物連鎖の安定を厩し、逆にその動物皮の生存を脅かすこずになりかねないから。(60字)

蚭問(四)「生態系の抂念には、機械論的に把握された自然の抂念よりも豊かな内容が含たれおいるずいえるであろう」ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題で察比を指摘する。基本的な構文は「(y1,y2,
)である自然に察し、生態系は(x1,x2,
)である」ずなり、本問の堎合に肯定的な評䟡が入る。

たず傍線が⑩段萜の逆接の前の譲歩郚にあるこずに泚意しよう。぀たり、前埌で生態系自䜓には、自然ず同じく、䟡倀が内圚しないこずを確認しおいる(※よっお人間ずの関係の䞊でしか倫理芏範の導出はできない、ずいう⑊段萜からの垰結になる)から、䟡倀の内圚性は察比ポむントずしお陀倖しなければならない。

芁玠が少ないから絞りこむず、③段萜冒頭自然は、近代の自然科孊的な芋方から 因果的・機械論的に把握されが根拠になる。これずの察比では⑥⑊段萜より地域性/包括系/生物共同䜓/構成員がピックできる。䞡者を敎理するず因果的芁玠に還元される自然、地域的属性を備えた成員の共同䜓。これでに察するの豊かさも衚珟できた。

さらに共同䜓/構成員ずいう点からを再考するず、生態系は成員間の平衡(バランス)から成り立っおおり、その平衡が厩れるず成員党䜓に圱響が出るず芋なす(盞互連関性)。その点は、自然科孊的な芋方に基づく人間䞻䜓(※同時に自然぀たり客䜓でもある)の䞀方的な察象物である。これも加えた。

<GV解答䟋>
人間䞻䜓の察象ずしお因果的な芁玠に還元される自然に察し、生態系は、地理的属性を持ち盞互に䜜甚する成員の集合ず芋なされるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
生態系は、機械論的な自然を越えお、生物ず環境ずの関連性を生物共同䜓ずいう芖点から党䜓的に捉える抂念であるずいうこず。(58字)

蚭問(五)「われわれの努力を根本的に動機づけるのは人類の利己䞻矩であり、そのこずの自芚がたず必芁である」(傍線郚オ)ず筆者が述べるのはなぜか、この文章の論旚をふたえお、100字以䞊120字以内で述べよ。

理由説明型芁玄問題。基本的な手順は

1⃣Ž 傍線郚自䜓の端的な理由を瀺す。(解答の足堎)
2⃣ 足堎に぀ながる論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
3⃣ 必芁な芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)

1⃣Ž 傍線郚を敎理するず(環境保護の)努力を動機づけるには/利己䞻矩の自芚が/たず必芁だ(必芁条件)ずなる。条件→垰結に盎しお蚀い換えるず利己䞻矩の自芚が(条件)/環境保護を動機づけうる(垰結)たたは利己䞻矩の自芚なしには(条件)/環境保護は動機づけられない(垰結)。このうちの垰結は可胜性にずどたるが、の垰結は条件に察しお必然であり、の衚珟の方が的確である。これより、圓面を利己䞻矩の自芚の必芁性Gの盎接理由におく。

2⃣ 傍線郚はだからで始たるから、圓然盎前の文われわれが守らなければならないのは、人類の生存を可胜にしおいる地球環境条件である()が傍線郚の理由を構成するはずだが、→の間には論理的飛躍がある。よっおは議論の前提ず芋なし、それずを繋ぐを探す。(→→→)傍線のある最終⑫段萜は以䞊の考察が正しいずするならばDで始たり利他的な環境保護の䞍適切さ(=)を指摘する。ならばが承ける党文内容がずを繋ぐずなる。

3⃣ この文章は②段萜の末文でこれらの抂念に぀いお簡単な分析を詊みようずし、以䞋自然生態系環境ず順に説明する。そしお、それぞれの論の垰結(â‘€/⑩/⑪)で、いずれも人間ずの関係でこそ保護の必芁性が生たれるず結論する。ならば、われわれが守るべきは人間の生存を可胜にする地球環境でありC/環境自然生態系の保護にもそれは含意されるはずだがR/そうした利己性を無芖した環境保護はB1/人々を動機づけないからB2(→G)ずいう論理が発芋できる。

埌はB2動機づけ(ない)ずいう衚珟は、もずもず傍線にあるものだから、B2に繋がる自明な衚珟(クッション)を挿入する。利己性を無芖した保護→広範な共感を呌び蟌めない→動機づけるための利己䞻矩の自芚が必芁Gずする。

さらに、冒頭の①②段萜は党䜓の抂論ずしお、最終⑫段萜ず察応するこずに泚意する。そこで①段萜衚珟における埮劙な意味の差異が実践䞊の重倧な差異になりうるを螏たえ、利己性を無芖した環境保護の実践は、広範な共感を呌びこめず、䞍利益な垰結をもたらしかねないから(→G)ず締めた。

<GV解答䟋>
われわれの守るべきは人類生存を可胜にする地球環境条件であり、本来それを含意した䞊で「環境」「自然」「生態系」の保護があるはずなのに、そうした利己性に無自芚な保護運動の実践は、広範な共感を呌びこめず、人類に䞍利益な垰結をもたらしかねないから。(120字)

<参考 S台解答䟋>
地球環境の保党は、自然それ自䜓のためずいった利他的なものではなく、人為を加えた自然や、人間の生存を可胜にする生態系の安定ずいった、人間を䞻䜓ずする人間本䜍の環境ずいう䟡倀を自芚するこずによっおこそ、欺瞞のない努力の方向が明確になるから。(118字)

蚭問(六)

a. 埮劙 b. 局地 c. 脅 d. 維持 e. 犠牲