傾向と対策

〈全体概要〉 本年の共通テストを小問ごとに①分野、②形式、③質的特徴の3つの観点から分類し、その傾向を探り、今後の指針を示してみよう。

 

① 分野横断的な問題できれいに分けにくい問題も少なくなかったが、概ね次のように分類できる。
A. 政治分野→9問(29点)
B. 経済分野→9問(30点)
C. 倫理分野→6問(19点)
D. 現社分野→6問(22点)
従来通り政治・経済分野が出題の中心ではあるが、倫理・現社分野の比重が高まり、他の公民科目との差別化を図っている。純粋な倫理分野(哲学・思想)は2問、アリストテレス、佐久間象山、キング牧師、マララ・ユスフザイ、フーコー、リースマンが問われた。このうち、アリストテレスとキング牧師以外は誤答選択肢で、それぞれ中江藤樹、マンデラ、レヴィ・ストロース、ハーバーマスに修正する必要があった。ムスリム女性で2014年ノーベル平和賞の受賞者でもあるマララ・ユスフザイ以外は基本的であろう(マララについては知らなくても正答を導ける)。その他、マイクロクレジット、ダイバーシティ、リプロダクティブ・ヘルス/ライツなどの現代用語の基礎知識については普段から関心を持って理解しておく必要がある。

 

② 設問形式で分類すると以下のようになる。
A. 正文・誤文単純選択問題→14問(45点)
B. 正答組み合わせ問題→11問(39点)
C. 正文全選択問題→5問(16点)
従来型のAタイプに対して、BCタイプのより複雑な設問形式が過半数を占める。Aタイプは原則4択なのに対し、Bタイプは最大9択、Cタイプは全て8択になるので単純に正答率が下がる。特にCタイプ(3つの文から正しいものをすべて選ぶ。正しいものがない場合もある)は消去法が通用しないから、例えば今回出題された「男女雇用機会均等法」のような法律や概念の内容についてもより正確な理解が必要となる。

 

③ 設問の質的特徴で顕著だったのは、リード文で条件を付して、その条件に合致する選択肢、あるいはその組み合わせを選ばせる問題(条件当てはめ問題)である。全30問のうち11問、得点にしてちょうど4割を占める出題となった(例. ドント式や信用創造の計算を条件を変えて導かせる。概念を定義しそれに該当する具体的事例を選ばせる)。これに、複数の資料の読み取りを必要とする問題が2問(8点)、バブルの発生から崩壊に至る経緯を並べ替えさせる問題(ア〜オ/6択/4点)を加えて、必要な知識を適宜呼び出しながら、その場で深く思考させる問題が全体の過半(52点)を占めた。特に、先の分野別の分類でいうと現代社会、形式別の分類でいうと正答組み合わせ型に、こうした思考問題が多く見られた。

 

以上より今後の現代社会の学習の指針は以下のようになる。 ① 分析から正答を導くためにはベースとなる知識が必要となる。また、倫理分野や現代用語の基礎知識も広く問われるので、知識の補充は抜かりないようにする。 ② 一方で現代社会をただの用語の暗記と捉えてはならない。基礎的な知識を早い時期に身につけた上で、共通テスト形式の問題(本試験の内容を受けて改良されるはずである)の演習に十分の時間を割く。その時、思考の手順の妥当性について、客観的なアドバイスを受けられる環境にあることが望ましい。

 

地歴・公民科担当 大岩光昭