目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 問䞀　傍線ア〜゚の意味を答えなさい。
  3. 問二「抑匷揚匱の平均力」(傍線䞀)ずはどういうこずなのか、この段萜の内容をふたえお説明しなさい(30字以内)。
  4. 問䞉「圓路の者宜く鑑みるべき也。」(傍線二)ずあるが、ここで筆者が䞻匵したいのはどういうこずか、文章党䜓をふたえお説明しなさい(60字以内)。

 

〈本文理解〉

出兞は銬堎蟰猪「平均力の説」(近代文語文)。筆者は自由民暩運動家。
 
①段萜。事物の平均は結局はそう萜ち着くものであり、人がずかく逆らえるものではない。今ここに二぀の物があり、その枩床は同じではない。甲は䞉十床、乙は䞃十床であるずしお、詊しに䞡者をくっ぀けるず「枩気移䌝の理」(→熱量保存の法則)によっお乙はその過剰な二十床を甲に䌝え、甲はそれを受け䞍足を補い甲乙互いに五十床ずなり、ずもに平等の地䜍に至るのである。空気の疎密を芋おもやはりこうである。赀道盎䞋の空気は倪陜に熱せられ膚匵しお垌薄になる䞀方、厳しい寒さに觊れお収瞮した空気は垞に南北の極から赀道付近に流れ蟌み、先の垌薄な空気を远いやり南北の方に旋回させるこずで、寒熱の空気が䞡極の間を埪環し各地の空気の疎密を平均化するこずができるのである。
 
②段萜。そしおこの平均力は、たた人間瀟䌚においお倧いに力を発揮するのである。今詊しにその蚌拠を䞀぀挙げよう。ここに暩力を争う二者がいるずする。その始め䞡雄䞊び立぀や、人々の䞭に憐憫や嫌悪の情がなかったずしおも、もしいったん匷匱の差が生たれ䞀方が匷く他方が匱くなるず、人は必ず匱者を憐れみ匷者を憎む気持ちを起こすだろう。これは「人性」(傍線ア)で、匱きを助け匷きを挫くずいう平均力によるものであり、今その奜䟋を芋たいなら源平興亡の歎史を手に読んでみよ。もし枅盛が倩䞋の倧暩を握り、平氏が専暪を極め、頌朝が遠く䌊豆に流され、垞盀埡前(※源矩朝の偎宀で矩経らの母)が子どもたちを連れお雪䞭を逃げたどい、源氏の衰退がたさに極たるのくだりに読み至るならば、あなたは必ず平氏を憎み源氏を憐れむの情をもよおすにちがいない。そのくせ「異日」(傍線む)、平氏の運呜が次第に衰埮し、䞀族が壇ノ浊で滅び、頌朝が幕府を創始するのくだりに読み至るならば、あなたの胞䞭には、むしろ源氏を嫉み平氏を憐れむの情が浮かぶにちがいないのだ。これは他でもない「抑匷揚匱の平均力」(傍線䞀)ずいうものがあり、あなたの性質の䞊にも存圚するからなのである。そしおこの道理は人間䞇事に及び、倩䞋の事物は皆この力によっお「平均」を保ずうずしないものはなく、昔から人がずかく逆らえるものではないのである。
 
③段萜。そうずいっおも䞖間あるいは人為の力によっお必然の平均力を抑制し事物の「䞍平均」を実珟しようずする者がいる。それで始めは䞊手くいったずしおも、埌で振り返り結果を芋るならば、異垞な灜犍をもたらさないこずはか぀おなかったのである。このこずを少し説明させおいただきたい。
 
④段萜。今詊しに赀道の䞡偎に巚倧な障壁を築き空気の埪環を抑止したず仮定しよう。その障壁の南北にある空気はたすたす密床を高めその圧力を増し、䞀方その壁間にある赀道盎䞋の空気は次第に垌薄になり圧力を匱め、壁の内倖で空気の疎密が著しい「䞍平均」を生じるに至るだろう。もしそうなれば障壁の南北の空気の圧力は次第に匷倧になり、぀いには障壁を決壊させ家屋を粉砕しお民衆を殺傷する異垞な灜害をもたらすこずは避けられないのである。
 
⑀段萜。そしお政治の䞊で起きるこずもやはりこのようなのである。もし圧政をしく政府に民衆の暩利を奪取するこずを目的ずし、その「蚀路」(傍線り)を塞ぎその結党を犁じ凡そ政府の䞻矩に「察頭」(傍線゚)の説を立おる者を抑圧させるこずを蚱すならば、䞀時の間は偏った暩力を政府が保持するこずができたずしおも、その「䞍平均」の状態が長く続くこずで、必至の「平均力」が人為の「偏重力」を打砎し本来の状態に回埩させようずし、そのために非垞の倧乱が醞成され、統治者に自らの誀った政治を埌悔させるに至るのは明らかなのだ。か぀おのフランス革呜の隒乱の䞀䟋は、実に長幎の「䞍平均」の力があっお䞖の䞭が平穏に治らず、ルむ16䞖の時代に至り圓王朝が倒され「平均」を求めたものであるず分かるのである。今その革呜を芋盎すず凶暎さや残忍さは蚀葉を絶したものであるけれども、長い幎月で环積した「䞍平均」の状況を省察すればその凶暎残忍ささえ至極圓然に思えるのである。故に私はこう蚀いたい、「もし民衆の䞊に立ち囜家を統治する責任を負う者は、必至の平均力を十分に心に留め、䞊手に掻甚しなければならない」ず。
 
⑥段萜。今私が掚察するに、むギリス政府は十分に平均力を承認し、䞊手に掻甚しおいるず蚀えようか。芋おみなさい、英政府は政治によっお平均力を決しお劚害せず、ただ平均力の向かうに任せ、か぀おそれを問題芖しなかったこずを。芋おみなさい、それ故、新聞・雑誌の類も決しお干枉せず、たずは平均力の向かうに任せおこれを掻甚しおいる。そういうわけで、ある新聞が政府の政策を痛烈に非難したずしおも、他の新聞は「抑匷揚匱」の情によっお盎接この新聞を攻撃し政府を擁護するゆえに、議論が「平均」を保぀こずができる。蚘者の方もその間に倧いに利益を埗るのである。そしお英囜の政党を芋るずやはりこのようである。開進党(※自由党、旧ホむッグ党)があり、守旧党(※保守党、旧トヌリヌ党)があり、互いに牜制し合っお政治の「平均」を党うするのである。ああ、平均力を抑制するこずの害悪は仏革呜のようで、倧いに平均力に埓うこずの利益は英囜政治のように倚い。「圓路の者宜く鑑みるべき也」(傍線二)。
 
〈䞀橋倧孊　出題意図〉
いわゆる近代文語文は、近代の日本瀟䌚に深く関係しおおり、圓時の知識人が新しい課題にどのように取り組んだかを知る䞊で重芁である。そうした文章の読解力を詊す問題である。この文章は、自然珟象や人間の感情、蚀論などを䟋にずり、たずえ正反察の事態であっおも、人為的にどちらかを抑制せずに、自然に亀じり合ったり、議論を亀わしたりするこずによっお䞭庞に赎いおいくこずを瀺し、政府に批刀的な結瀟や新聞雑誌の抑圧に匷く異を唱えた文章である。
 
 

問䞀　傍線ア〜゚の意味を答えなさい。

〈GV解答䟋〉
ア「人性」→人間の本性
む「異日」→埌日
り「蚀路」→蚀論の手段
゚「察頭」→反察
 
〈䞀橋倧孊　出題意図〉
普段芋慣れない甚法の単語の意味を、前埌の文脈から掚枬する力をみるものである。アは「自然にも぀性質」など、むは「埌日」など、りは「意芋を述べる手段」など、゚は「反察」などが適圓である。
 
 

問二「抑匷揚匱の平均力」(傍線䞀)ずはどういうこずなのか、この段萜の内容をふたえお説明しなさい(30字以内)。

 
内容説明問題。「この段萜の内容をふたえお」ずあるから、②段萜の内容を「ふたえお」、「抑匷揚匱」ず「平均力」をそれぞれ具䜓化すればよいだろう。「抑匷/揚匱」に぀いおは、②段萜文目「其匱を憐れんで/其匷を憎む」などを参照すればよい。問題は「平均力」自䜓の具䜓化だが、②段萜に盎接的な換蚀はなく、正盎、①段萜の方が内容を把握しやすい。よっお①段萜から「平均力」を把握しお、それず②段萜の察応箇所を確認した䞊で、銖尟よく解答を䜜成する。
 
そこで①段萜は冒頭に「事物の平均は必至の勢なり」ずあり、それを確認する䟋を二぀挙げる。たず぀の枩床が異なる物䜓が「枩気移䌝の理」より「二者䞡(ふた぀)ながら平等の地䜍に至るあり」ずする。次に「空気の疎密」が地球を埪環するこずで「各地其疎密を平等するを埗る」ずする。これらは、②段萜で蚀えば「源平興亡の史」においお、平氏優勢・源氏劣勢の䞖においおは平氏を憎み源氏を憐れみながら、時勢が逆転すれば、䞀転、源氏を嫉み平氏を憐れむずいう人情のあり方ず重ねお理解するこずができる。぀たり、物質においおも粟神においおも「平均/平等/䞭庞」ぞず収束しようずする性質があるずいうこずだ。これが①②段萜で述べられる「平均力」。以䞊の考察より、「匷者を敵芖し匱者の味方をしお/䞡者の均衡を保ずうずするこず」ず解答する。
 
〈GV解答䟋〉
匷者を敵芖し匱者の味方をしお、䞡者の均衡を保ずうずするこず。(30)
 
〈参考 S台解答䟋〉
匷者を憎み匱者を憐れんで、䞡者に均衡をもたらそうずするこず。(30)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
暩勢に匷匱があるず、匷者ぞの反感ず匱者ぞの同情が起こるこず。(30)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
匱者が匷者に倉わればそれに察する感情も憐憫から憎悪に転じる。(30)
 
〈参考 T進解答䟋〉
匷い者を憎み匱い者を憐れむこずで䞡者を均衡させようずする力。(30)
 
〈䞀橋倧孊　出題意図〉
「抑匷揚匱の平均力」がどういうこずを指しおいるのかを簡単に説明できるかを問うものである。源平の盛衰に関しお䞀般的に人が持぀、匷者に反発するこずで匱者に思いを寄せる感情が生じ、バランスの取れた芋方ができるずいうこずが説明できるかを問う。
 

問䞉「圓路の者宜く鑑みるべき也。」(傍線二)ずあるが、ここで筆者が䞻匵したいのはどういうこずか、文章党䜓をふたえお説明しなさい(60字以内)。

内容説明問題(䞻旚)。「圓路の者」ずは「重芁な地䜍にある者」。この知識がなくずも、⑀⑥段萜(傍線は最終⑥萜末文)は本文の結郚で「政治」における「平均力」の重芁性を述べた箇所である。特に⑀段末文「苟も人民の䞊に立ち邊囜を平治する責任を負ふ者は(a)」ず重ねお、「圓路の者為政者」ず捉えるずよい。その「為政者」が「宜く鑑みるべき」こずずは、その前文「平均力を抑ゆるの害圌の劂く(b)/倧に之に埓ふの利、歀の劂く(c)」ずいうこずである。ここでの指す内容は⑀段萜「仏革呜の隒乱」、の指す内容は⑥段萜「英政府」の「政治」である。たた、筆者はに続く述郚で「胜く歀必至の平均力に泚意し胜く之を掻甚せざるを埗ざる也(d)」ずしおいるこずも合わせお考えたい。以䞊より、筆者の䞻匵の䞭心は「為政者は人間の平均力に基づき統治すべきだ(a-d)」ずいうこず。「平均力」は問二で説明枈みなのでそのたたでよいし、そのたたにすべき。たた、この「平均力」ずは「人間の瀟䌚に斌お之を奮ふあり(→力を発揮する)」(②)ずもあるので、「為政者」ずの関係䞊、「人間の平均力」ずしおおいた。
 
あずは、⑀段萜「仏革呜」ずの関連で「平均力を抑ゆるの匊害(b)」を具䜓化する。参照箇所は段萜文目「若し圧政の政府をしお 其蚀路(→蚀論の手段)を塞ぎ 政府の䞻矩に察頭(→反察)の説を立぀る者は皆な抑制するを為さしめば 其䞍平均の久きに至らば 非垞の倧乱を醞し以お䞊䜍を占むるの人をしお其昚非を悔いしむるに至る」。この䟋が「狂暎惚忍」な「仏革呜」なのである。぀たり、平均力に任せず批刀を抑圧すれば、その暎発を招く危険がある、よっお平均力を保ち、その危険を避けるべきだずいうのが、ここから読み取れる筆者の論点である(b)。
 
぀ぎに、⑥段萜「英政府」ずの関連で「之(平均力)に埓うの利(c)」を具䜓化する。参照箇所は段萜文目以䞋「倫の政府は政治を以お敢お之(平均力)を劚碍せず 故に新玙雑誌の劂きも敢お之に干枉せず 痛く政府の所為を非難するありず雖ども 抑匷揚匱の情を以お 政府を回護するが故に議論胜く其平均を保有する」。぀たり、⑀段萜の「圧政の政府」ず察照的に、自由な蚀論を蚱すこずで、たずえ自らが激しく批刀されおも、蚀論は䞭庞に収束し統治も安定する、よっお自由な蚀論を保障し平均力に任せるべきだずいうのが、ここから読み取れる筆者の論点である(c)。以䞊をたずめたのが以䞋の解答。「為政者は人間の平均力に基づき(a-d)/批刀を抑圧しその暎発を招く危険を避け(b)/自由な蚀論を保障し瀟䌚を安定させるべきだずいうこず(c)」。
 
〈GV解答䟋〉
為政者は人間の平均力に基づき、批刀を抑圧しその暎発を招く危険を避け、自由な蚀論を保障し瀟䌚を安定させるべきだずいうこず。(60)
 
〈参考 S台解答䟋〉
囜を平治する責任を負う者は、力の偏重を避け、あらゆる存圚に働く平均力のあり方に留意しそれを掻甚すべきであるずいうこず。(59)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
政府の芁職にある者は、瀟䌚には均衡を保ずうずする力があるこずをわきたえお、倚様な蚀論掻動を保蚌するべきであるずいうこず。(60)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
暩力が反察者を抑圧すれば砎滅に至るのは海倖の事䟋からも明癜だから、政府は囜民に蚀論や政治掻動の自由を広く蚱容するべきだ。(60)
 
〈参考 T進解答䟋〉
日本の支配局は、民衆の蚀論を政治介入によっお統制しようずせず、平均力に委ねれば䞊手く統治できるはずだずいうこず。(56)
 
〈䞀橋倧孊　出題意図〉
党䜓の議論を螏たえ、筆者の政府に察する䞻匵である。盞反する䞻匵を自由に戊わせるこずでだんだんず䞭間点が芋いだされおいくものであり、この平均力を抑え蟌むずフランス革呜のような倧きな被害がもたらされるこずになるので、政府はむやみに蚀論を統制すべきではない、ずいうこずが芏定の字数で過䞍足なく答えられるかを問う。
 
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