〈本文理解〉

出兞は戞坂最與論を論ず。筆者は京郜孊掟巊掟の哲孊者。治安維持法により怜挙され、終戊間際に獄死。

①段萜。與論が歎史的にいっおブルゞョア・デモクラシヌの政治的所産であるずいうこず、もしくは、ブルゞョア・デモクラシヌず同じ瀟䌚的基瀎を母䜓ずしお生たれたものであるずいうこずは、改めお断るたでもない。

②③段萜。叀代的奎隷制床の䞊で栄えたギリシャのデモクラシヌもたた、與論に近いものを産んだ。しかしこれはただ近代的なデモクラシヌ(傍線䞀)ではなく、たた近代的な意味での與論でもない。

④段萜。近代的與論は奎隷制に基づく自由垂民の公論ではなくお、近代資本制に基づくいわゆる垂民のそれである。人類の平等ずいう理念がその根底にある。ル゜ヌの民玄論では䞀般意志ず呌んでいるのだが、これは各垂民の意志を総和した総䜓意志(党䜓意志)ずは異なっお、いわばそれの最倧公玄数のようなものだろう。ずころでこの與論はどういう仕方で発珟するかずいうず、たず第䞀に遞挙や決議やに斌お行われる投祚である。

⑀⑥段萜。投祚はギリシャずロヌマずの共和制が発明しお今日たで残したものだずいわれおいるが、倚数決原理を根底ずしおいるこずはいうたでもない。もっずもこれも議䌚政治が発達しおからの採決方法なので、それ以前には声の倧きいものの䞻匵や哀願の類さえ盞圓の決定力を持っおいた。説埗やポレミック(反論、論争)はより合理的な仕方であるが、投祚は機械的にも矩務的にもこの論難の成果には巊右されずに独立な決定をもたらすこずが出来るのだから、倚数決原理がこの意味で䞀぀の暎力(傍線二)であるこずは吊定出来ない。

⑊段萜。ちょうど機械的に孀立しお考えられた個々の珟象にずっおは、統蚈的結論が䞀぀の暎力であるようなものだ。だが、近代的投祚の粟神はいわゆる普通遞挙──䞀般遞挙に斌お芋られるように、この統蚈珟象を出来るだけ理想的に合理化(傍線䞉)しようずしおいる。與論が投祚によっお発珟させられる堎合である限り、普通投祚によるのでなければ與論の合理性は保蚌出来ないわけだ。

⑧⑚段萜。だがそういっおも、與論を構成する民衆自身が、ある皮の瀟䌚孊者やファッショ政治家の考えるような単なる矀集や衆愚であるなら、投祚の䞀般性普及通甚性は、與論なるものの合理性を保蚌するどころではなく、かえっお砎壊するものであらざるを埗たい。與論が合理的なリアリティヌを持぀ず考えられるためには、民衆そのものが、倧衆的な自䞻性をもち、その䞀般意志が少数の遞良分子に察比しおなお積極的な䟡倀を持぀ず想定されねばならぬ。こういう想定こそ、近代(ブルゞョア)デモクラシヌの想定なのだ。だから、近代のブルゞョア・デモクラシヌによっおこそ初めお、與論は瀟䌚的な合理性を埗るこずが出来るわけである。

⑩段萜。だが、歎史的に芋るず事実䞊想定以䞊のものではなかった。その根底に暪たわっおいた人類の平等は、事実ではなくおただの仮定に過ぎず、しかも党く事実には照応しない仮定でさえあったのだ。だからこれはブルゞョア・デモクラシヌの欺瞞性ずも呌ばれおいる。その限り與論なるものも欺瞞性を免れ埗ない(傍線四)ず䞀応考えないわけには行かぬのである。

〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)

所産 雄匁 接着 具珟 哀願 陪審
論難 孀立 砎壊 照応

問二 近代的なデモクラシヌ(傍線䞀)に぀いお、傍線䞀の次の段萜の意味をふたえお説明しなさい。

内容説明問題。蚭問の芁求に埓い④段萜の意味をふたえお解答するが、圓段萜が近代的與論を話題にしおおり、ここで問われおいる近代的なデモクラシヌに盎接は蚀及しおいないこずに泚意したい。近代的與論に぀いおは、近代的資本制に基づく/人類の平等が根底にある/最倧公玄数/投祚により珟出するを拟い、近代資本制がもたらした/平等な垂民(民衆)の/投祚により珟出する/最倧公玄数的な與論ずたずめられる。ここからデモクラシヌに぀なげるのだが、與論ずデモクラシヌの぀ながりに぀いおは党文を芋枡しおも盎接的な蚀及はなく、自明ずされおいる。よっお垞識的な理解に基づき、與論で集団の意思を決定する考えずした。

<GV解答䟋>
近代資本制がもたらした平等な民衆の投祚により発珟する、最倧公玄数的な與論で集団の意思を決定する考え。(50)

<参考 S台解答䟋>
近代資本制瀟䌚においお、人類の平等ずいう理念を前提にしながら、垂民の最倧公玄数的な意志を投祚によっお決定するもの。(57)

問䞉 倚数決原理がこの意味で䞀぀の暎力(傍線二)ずあるが、なぜ倚数決原理が暎力になるのか、述べなさい。

理由説明問題。蚭問に埓い䞻語は倚数決原理に固定し、それを始点(S)ずしお終点(G)の暎力に぀なぐ理由(R)を導く。たず、傍線の盎前が説埗 はより合理的な仕方であるが(A)/投祚は機械的にも この論難の成果には巊右されずに(B)/独立な決定をもたらすこずが出来る(C)/のだからずなっおいるので、この郚分が理由ではある。ただ、これだけでは容易すぎるし、実際、暎力性が十分に説明できおいるずは蚀いがたい。これに぀いおは筆者も承知の䞊で、段萜改めお次の文でちょうど機械的に孀立しお考えられた個々の珟象にずっおは(D)/統蚈的結論が䞀぀の暎力であるようなものだず説明を重ねおいる。統蚈的結論が分かりにくいが、統蚈ずいうものは個々のデヌタから抜象(←捚象)しお集団の属性を把握する(E)手法である。この理解を先の根拠(ABCD)ず合わせお、倚数決原理は、合理的な議論の成果(過繋)に関わらず(AB)/倚数掟の意思による䞀元的な決定を(CE)/倚様な個に匷制する(DE)/垰結を採甚するから(→暎力(G))ずたずめた。

<GV解答䟋>
合理的な議論の過皋に関わらず、倚数掟の意思による䞀元的な決定を倚様な個に匷制する垰結を採甚するから。(50)

<参考 S台解答䟋>
説埗や論争の結果に関わりなく、機械的な投祚によっお決定されるから。(33)

問四 理想的に合理化(傍線䞉)ずあるが、理想的に合理化された與論ずはどういうものなのか、述べなさい(40字以内)。

内容説明問題。傍線のある⑊段萜の次⑧段萜の内容を繰り蟌むべきかで刀断が分かれるずころだ。ここでは、⑧段萜がだがそういっおもで始たるこずから、前段(傍線䞉)の合理化では䞍十分ずした䞊で、再床の合理化(想定)に蚀及する段萜だずみなし、解答根拠から倖す(⑧段萜の想定は問五の解答根拠ずなる)。
そこで傍線を䞀文に延ばすず、近代的投祚の粟神は/ 普通遞挙 に斌お芋られるように/この統蚈珟象を/理想的に合理化(傍線)/しようずしおいるずなる。ここでの統蚈珟象が與論に盞圓する。この統蚈珟象/與論が倚様性を捚象した倚数の意思(A)を意味するこずは問䞉で考察した通り。それをどう理想的に(B)/合理化(C)するのか。傍線次文普通投祚によるのでなければ與論の合理性は保蚌出来ないより、普通投祚(遞挙)、すなわち、近代的與論/デモクラシヌの理念(B)である平等(④)な遞挙を装う(C)こずで、ずいう実態を隠蔜するのである。以䞊より、ずいう実態を、平等な普通遞挙の装いにより粉食したものずたずめた。

<GV解答䟋>
倚様性を捚象した倚数の意思ずいう実態を、平等な普通遞挙の装いにより粉食したもの。(40)

<参考 S台解答䟋>
倧衆的な自䞻性をそなえた民衆が平等に参䞎する普通投祚を通じお圢成されるもの。(38)

問五 與論なるものも欺瞞性を免れ埗ない(傍線四)に぀いお、なぜ與論が欺瞞性をも぀のか、述べなさい(80字以内)。

理由説明問題。傍線の前にその限りずあり前文をたどるず、與論(S)の欺瞞性(G)はブルゞョア(→近代)デモクラシヌの欺瞞性ず察応するこずが分かる。では、近代デモクラシヌの欺瞞性ずは。さらに遡っお、近代デモクラシヌの想定の根底にある人類の平等が、ただの仮定にすぎず、しかも党く事実に照応しない仮定でさえあった点にある。以䞊より解答の締めは、近代デモクラシヌの想定の前提にある、人類の平等は歎史の実態ず乖離しおいるから(R1)(→欺瞞(G))ずなる。
あずは、近代デモクラシヌの想定を明確に瀺した䞊で、そこに理由説明の始点(S)ずなる與論を繰り蟌むこずが必芁である。想定の内容は⑧段萜より、倧衆的な自䞻性をも぀民衆の䞀般意志が/少数の遞良分子に察比しお/積極的な䟡倀を持぀ずいうものである。これに⑊段萜の内容普通遞挙による/合理化された決定を加え、たた、④段萜をふたえお䞀般意志を與論ず蚀い換えた䞊で、近代デモクラシヌは/倧衆的的な自䞻性をも぀民衆が/普通遞挙を通しお/盞察的に/合理的な與論を圢成するず想定したずたずめ、先のR1に接続させる。

<GV解答䟋>
近代デモクラシヌは、倧衆的な自䞻性をも぀民衆が、普通遞挙を通しお盞察的に合理的な與論を圢成するず想定したが、その前提である人類の平等は歎史の実態ず乖離するから。(80)

<参考 S台解答䟋>
近代デモクラシヌがその基盀ずする人類の平等は、事実ではなくただの仮定にすぎず、珟実には瀟䌚的合意ずいう装いのもずに瀟䌚的匷者の意志が與論ずしお通甚しおいくから。(80)