小論文は、ただの過去問ではありません。

そこには、いまの社会をどう見るか、どんな前提を疑うか、どの立場から問題を考えるかが詰まっています。

今回取り上げるのは、2023年度 岩手大学 人文社会科学部の小論文です。

テーマは「まわりの理解や許可に依存しない社会」。

多様な違いをもつ人たちが安心して過ごせる場をつくるには、何が必要なのか。
制度や場の設計を、マジョリティの理解や許可に委ねるのではなく、最初から誰もが安心して過ごせる形にしていくとはどういうことかを考える問題です。

 

GV小論文ジャーナルでは、過去問の解答例を通して、社会の見方・考え方を読んでいきます。

今回の問題

2023年度 岩手大学/人文社会科学部

次の文章は筆者がスウェーデンの学校やユースセンターを視察で訪れたことに関して書かれたものです。この文章を読んで、問1と問2に答えなさい。

出典は遠藤まめた『みんなが自分らしくいるための はじめてのLGBT』。

問1

「うちの学校にもまだ課題はある」(傍線部①)とはどういうことか。120字以上150字以内で説明しなさい。

解答例

スウェーデンの学校では、属性の違いを越えてあらゆる個人が尊重される環境や仕組みが志向されている。その点から、宗教的規範や性的嗜好、体に傷があるなど様々な理由で肌を見せられない生徒に、一人で着替えるため自分を定義させて教師が許可するような構造が残る現状は、前述の理念が十分に徹底されていないということ。(150字)

問2

「まわりの理解や許可に依存しないやり方を考えることは、様々な違いをもった人たちが安心して過ごせる場をデザインするためには、とても役立つと思います」(傍線部②)という筆者の考えを踏まえた上で、「まわりの理解や許可に依存しない」社会についての自分の意見を、510字以上700字以内で述べなさい。

解答例

 筆者の考えのうち「様々な違いをもった人たちが安心して過ごせる場をデザインする」(Aとする)という点については、男女の役割分担や男女による婚姻関係、国民を正規の成員とする国家のあり方のような伝統的な価値観と衝突することが想定される。しかし、近代社会が自由で平等な成員によって成り立ち、これまでも身分制が打倒され、男女平等が志向されてきたように、今後もその成員が多様な存在に対して開かれていくことの正当性については自明としてよいだろう。

 次にAという目的を実現するために、「まわりの理解や許可に依存しないやり方を考える」ことについては、私自身は同意するが、強い異論が予想される。つまり、異質な個人が共同の社会を営むためには一定の相互理解は不可欠だし、民主的な手続きを経て決定された制度を管理・運用する権力(警察、行政、司法など)による「許可」も必然性があるという反論が考えられる。たしかにそれ自体は正しい。だが、ここには「理解」と「許可」が必要であるケースを一般化し、本文で想定されている別のケースに当てはめることによる誤謬がある。

 本文において「理解」や「許可」の主体は学校に代表される既存社会の価値観であり、その対象は社会で未だ十分の位置を持たないマイノリティである。社会のマジョリティがフリーパスで参入できる事柄も、マイノリティはその都度マジョリティに対し自己の存在を明かす必要に迫られるのだ。そう考えれば、むしろ「理解」を求められるのはマジョリティの側ではないか。多様な存在の共生を実現するため、我々はマイノリティの立場に身を置き思いを辿り制度を改善していかねばならない。(700字内)

 

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