先日行われた大学入学共通テスト試行調査問題の国語第一問(記述式)の解説を行います。大学入試センターから公表されている解答例・採点基準などはこちらから↓↓

https://www.dnc.ac.jp/daigakunyugaku…/pre-test_h30_1111.html

〈大問構成〉

「まことさん」が「ヒトと言語」についての探求レポートを書くときに参考にした二つの文章(【文章 Ⅰ 】【文章 Ⅱ 】)が与えられ、それについて3つの記述式の問いが設けられている。問1は【文章 Ⅰ 】を、問2は【文章 Ⅱ 】をそれぞれ参照するように指示されている。問3については、二つの文章に加えてもう一つの【資料】文を参照する。
【文章 Ⅰ 】【文章 Ⅱ 】を通読して問題に取り組む。構成上、【文章 Ⅰ 】→問1→【文章 Ⅱ 】→問2の順で取り組んでもよいだろう。

 

〈設問解説〉
問1【文章 Ⅰ 】の傍線部A「指差しが魔法のような力を発揮する」とは、どういうことか。30字以内で書け(句読点を含む)。

内容説明問題。記述式ではオーソドックスな問題で、要素に分け、本文の言葉を利用して、適切に言い換えればばよい。共通テストの性質から、あまり過激に言い換えないようにしておく(^^)。本問の場合、「指差しが/魔法のような力を/発揮する」と分かれるが、ポイントは「魔法のような力」の一つのみ。「魔法」だから、普通はできないことができるということだろう。

 

傍線部が「この時」という指示表現に続くことに着目する。傍線部のある④段落は、二つの「状況」に場合分けされ、その内の後者が「この時」と対応する。つまり、「ことばを用いずに、指差しも用いないで…相手になにかを指し示したり、相手の注意をなにかに向けさせたりする状況」に対し、「ことばのまったく通じない国に行って、相手になにかを頼んだり尋ねたりする状況」である。そこで、前者が「難しい/ほとんど不可能」なのに対し、後者の時、指差しが「魔法」の力を発揮するのである。
こう整理すると、指差しの「魔法」の力とは、「ことはを用いずに、相手になにかを頼んだり尋ねたりすること」である。「頼んだり尋ねたり」は具体例だから気に入らないので、次段落の「(自分の関心あるものに)他者の注意を向けさせる」を使い、「一般化」する。

 

<GV解答例>
指差しによって、ことばを用いずに相手の注意を向けさせること。(30)

※ 大学入試センターの解答例によると、傍線部の主語「指差しが」は省略されている。記述の解答を作る場合、自明の部分であっても、傍線の要素は置いておくのが基本だが、特に求められていないようだ。それなら、ということで別解。なお、「頼んだり尋ねたり」という表現をそのまま使うのもオッケーなようだ。(・o・)

 

<GV解答例(別解)>
ことばを用いずに、自分の関心事に相手の注意を向けさせること。(30)

 

問2【文章 Ⅱ 】の内容を基に、子どもが「初期の指差し」によって言語を習得しようとする一般的な過程を次のようにノートに整理してみた。その過程が明らかになるように、空欄に当てはまる内容を40字以内で書け(句読点を含む)。

 

空欄補充問題。空欄の前後は以下の通り。「ある単語を耳にする(A)→(子どもは無数の候補の中から適切な一つを選ぶ必要が生じる(B)/しかも(+)/大人は「 (空欄) 」(C))→だから子どもは積極的に指差しをする(D)」。Aを手がかりに、【文章 Ⅱ 】から該当箇所を探すと、③段落に「ある単語を耳にしたとき/B´/しかも/C´」という箇所が見つかる(Dは④段落「だから」以下と対応)。以上より、C´「(大人は)(英語の先生が生徒にしてみせるように)本を手にとって”This is a book.”と教えてはくれない」が空欄の内容となる。が、これは具体例なので、Bと対応させる意味でも「一般化」する必要がある。
できるだけ、本文の言葉を利用しよう。③段落冒頭の「単語とその指示対象との対応関係」に着目する。大人は、「book→単語」と「実物の本→指示対象」との対応関係を、「本を手にとって→対象を明確に指し示すことで」教えてくれない(具体→一般)。「だから」子どもは積極的に指差しをする、のである(Dへのつながりもよし)。

 

<GV解答例>
単語とその指示対象との対応関係を、対象をはっきりと指し示すことで教えてくれない。(40)

※ 大学入試センターの解答例には、「本を手にとって、「これが本だ」と教えてはくれない」というのもあった。英語を日本語に直した以外は、該当箇所を具体例のまま抜き出しただけである。「一般化」という配慮は、求められていないのかもしれない。(・o・)

 

問3 まことさんは、次の【資料】を見つけ、「指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」があることを知った。まことさんは、「話し手が地図上の地点を指さす」行為もこのケースに当てはまることに気付き、【文章 Ⅰ 】と【文章 Ⅱ 】に記された「指差し」の特徴から、なぜ「同一視できないケース」でも「話し手が示したいもの」を理解できるのかについて考えをまとめることにした。まことさんは、どのようにまとめたと考えられるか。後の(1)~(4)を満たすように書け。

 

(1) 二文/80~120字(句読点を含む)。
(2) 一文目/「話し手が地図上の地点を指さす」行為が「指されたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」であることを、【資料】のメニューの例に当てはめて書く。
(3) 二文目/聞き手が「話し手が示したいもの」を理解できる理由について書く。ただし、話し手と聞き手が地図の読み方について共通の理解を持っているという前提は書かなくてよい。
(4) 二文目/「それが理解できるのは~からである。」とする。

 

条件に沿って、「(指さしたものと示したいものとが)同一視できないケース」でも「話し手が示したいもの」を理解できる理由を説明する。一文目については、【資料文】の「たとえば」以下のメニューの記述を、「地図」のケースに、置き換えて(+無駄を省いて)書けばよい。「メニューに載っている料理の名前…を指さして「これにしよう」と言った場合」→「(話し手が)地図上の地点を指さして「ここにしよう」と言った場合」/「「これ」で指示されているのは…文字…そのものではなく」→「「ここ」で指示されるのは地図上の地点ではなく」/「文字…が表している料理です」→「地図が表す実際の場所である」。

 

二文目については、(4)より「それが理解できるのはAからである」という構文を守り、Aを【文章 Ⅰ 】【文章 Ⅱ 】の「指差しの特徴」(←設問文)から探す。この時、(3)の「前提」をふまえておこう。その上で、「指さし」と「示したい」が違っても「理解」できる理由(A)は何か。まず、【文章 Ⅰ 】③段落「指差した人間の位置に自分の身をおかないかぎり/指されている…ものは特定できない」とある。ここから逆に、「指さした人間の位置に自分の身をおくと(そして、それは簡単にできる←③)/指されているものは特定できる」となる。この「指さした人間の位置に自分の身をおくことができる」が根拠の一つ(A1)。

 

次に、【文章 Ⅱ 】⑤段落「(指差しによって)対象がもたらす同一のイメージを持つ機会が提供される」とあり、これも理由となる。つまり、「指さし」と「示したい」が違っても、「指示された対象のイメージが共有される(A2)」から、聞き手に「理解」されるのである。二文目の構文のAの位置に(A1+A2)を代入し、一文目も含めて字数を整え完成させる。

 

<GV解答例>
話し手が地図上の地点を指さして「ここにしよう」と言った場合、「ここ」で指示されるのは地図上の点ではなく、地図が表す実際の場所である。それが理解できるのは、その指さした相手の位置に自分の身をおき、指示された対象のイメージを共有できるからである。(120)

※ 大学入試センターが公表している採点基準によると、上述のA1とA2のうち、片方だけでもよいとなっている。限られた時間の中で、学力の必要最小限度を問う共通テストとしては、解答の厳密性や細かな表現力までは問わないということだろう。

 

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