〈本文理解〉

出典は塩原良和『分断と対話の社会学──グローバル社会を生きるための想像力』
 
 

問一「国境を越える難民の激増」(傍線部(1))という現象について、本文のメタファーを用いて、40字から60字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
グローバル化による難民の「流れ」があまりに急激であるため、政府による「水路」の制御を超えて、「氾濫」を起こしている現象。(60)
 
〈参考 S台解答例〉
難民が、大幅に増加し、大きな川の流れとなって氾濫し、国境のネットワークという堤防の制御の限界を超えて移動するという現象。(60)
 
〈参考 K塾解答例〉
グローバリゼーション下、国境を越えて移動する難民の流れが、それを制御する制度としての水路の限界を急激に越え出ていること。(60)
 

問二「メタファー的表現を受け取った相手はそれに刺激され、新しい思考と表現を加えて」(傍線部(2))にあるように、既存のメタファーに新たな思考と表現を加える事例として、筆者自身は「渦」というメタファーにどのような新しい思考と表現を加えたか。100字から120字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
グローバルな「流れ」が「渦」の境界と内部を変えるというメタファーの含意から、地域の内部に「堆積」した歴史や集合的記憶が「流れ」のもたらす出来事によって呼び覚まされ、再解釈され、語り直されていくプロセスとして「渦」を捉え返し新たな表現とした。(120)
 
〈参考 S台解答例〉
ある場所の集合的記憶が現代の出来事によって喚起され、再解釈され、歴史が語られ直されていく過程を考え、水の底に沈殿していた堆積物が渦によって巻き上げられ、浮上し、新しい流入物と混合し、以前とは異質な堆積物が再び沈殿していくという表現を加えた。(120)
 
〈参考 K塾解答例〉
外部から新しく流入する人・モノ・カネ・情報等が複合しつつ領域性に影響を与えるさまを表現する「渦」に、そうした事象と混淆しながら、地域の「堆積物」としての過去の集合的記憶が呼び覚まされ再解釈されていくという歴史の生成変化のイメージを付加した。(120)
 

問三「大半の人々はその中間にいる」(傍線部(3))について、「その中間にいる」とはどういう状態であるか。人生を航路になぞらえ、「流れ」と「船」の関わり方のイメージを用いて、150字から170字で説明しなさい。

〈GV解答例〉
グローバリゼーションという制御しきれない時代の「流れ」の中、人生という航路を「船」で進む時、一方には流れに徹底的に抗うという主体的立場、他方には流れのままに漂流するという受動的立場がある。このうち前者は強大な力と意思を求めるので、目的に達するため流れに身を任せながらも慎重に進路を保ち、時に積極的に力を尽くすという、多くの人が選択する状態。(170)
 
〈参考 S台解答例〉
グローバリゼーションという大きな時代の流れの中を、人生という船で航海する現代人の多くが、強大な力と意思をもち、自己決定可能性が高く、流れに徹底的に抗うという生き方ではなく、無力で自分の意思に反して、流れのなかで完全に自律性を失い、流されるがままという生き方でもなく、流れに身を任せながらもある程度船の移動を自己決定して人生を生きていく状態。(170)
 
〈参考 K塾解答例〉
グローバリゼーションという時代の激流に動かされずに、人生の航路を主体的に決定しようとするには、超人的な意思と力が求められ、他方、時流に呑まれて漂流するだけなら、自己の無力さを痛感させられることになるため、多くの人々は、時代の流れに乗りながらも、遭難しないように自らの人生の舵を取り、流れを乗りこなすをしているという状態。(159)