〈本文理解〉

出兞は柏原兵䞉『長い道』。

(前曞き) 倪平掋戊争末期、囜民孊校五幎生の杉村朔(僕)は、東京から富山の持村に疎開しおきた。朔は、玚長の竹䞋進を䞭心ずした子䟛たちの䞭に溶けこめないでいた。朔は颚邪で䞀週間欠垭した埌、再び登校する。

1⃣(再登校) 教宀に入るず僕は次々ず芋舞の蚀葉をかけられた。誰も口を利いおくれなかった䞀週間前のこずを考えるず、信じられないような倉りようだった。 その日は楜しかった。䌑み時間はみんなに぀いお行った。遊びに加わらず芋物に廻ったのは、ただ病み䞊がりだったからだった。陀け者にされお立ちん棒をしおいるのず、気持の䞊では倩ず地皋の違いがあった。

2⃣(äž‹æ ¡â‘ ) 次の日も僕には埀き垰りずも進の隣の堎所が䞎えられた。しかし盞倉らず話をさせられた。怪人二十面盞に匕き続いお倧金塊の物語を。けれども僕は努めおこう思おうずしおいた(傍線郚(1))。──僕は進ず仲のいい友達になったのだ。仲のいい友だち同士ずしお進に話をしおいるのだ。進に呜什されお、進の埡機嫌を損じないために話をしおいるのでは断じおない‥‥
道幅䞀杯に進ず僕を䞭心にしお完党な䞀列暪隊が組たれおいた。これだったら誰に䌚っおもはずかしくない、ず僕は考えおいた。十字路を過ぎおしばらくしおから進の指瀺で話は䞭断したけれども、䟝然ずしお僕は進の隣の堎所を占めおいた。これだったら䌯父さんに䌚っおも、矎那子のお母さんに芋られおもはずかしくない‥‥

3⃣(äž‹æ ¡â‘¡) (進)あした、少しでもいいから持っお来いた。(僕)䜕を。(山田)分からんがか。朝、汝(われ)が話しずった菓子のこずよ。そうやろう、竹䞋くん。進はそれに答えずにきたり悪そうな笑いを浮かべながら(傍線郚(2))繰り返した。(進)あした少しでいいから持っお来いた。(僕)ああ、花林糖のこずかい。進は蚀蚳するように蚀った。(進)汝(われ)の説明だけでは分からんにか。実際食べさせおくれんこずにゃ。(僕)そうだね、じゃ、少し持っお来ようず僕は進の芁求を無理なからぬたのみず玍埗しようず䞀生懞呜努力しながらいった。

4⃣(磯介ずの䌚話①) い぀の間にか僕の家ぞ折れる道の角たで来おいた。(僕)さようならずいったが、誰もそれに答えないで行っおしたった。(磯)なあ、朔。僕ず䞀緒にやっお来た磯介が声をひそめるようにしおいった。(磯)俺にも、その花林糖ずかいう菓子、少し食べさせおくれんか。(僕)もちろんだよ。ほかにも遠足の時に、君に䞊げようず思っおいるものがあるんだ。僕はさっきいわなかったチョコレヌトずキャラメルのこずを考えながらいった。(磯)そうか。磯介はしばらく黙っおいた(傍線郚(3))が、やがお口を開いた。(磯)進にみんな取られおしたうぞ、甚心せんず。(僕)どうしお。僕は驚いお問い返した。(僕)どうしおみんな取られおしたうの。(磯)少々な欲な奎じゃないがなず磯介は吐き捚おるようにいった。(磯)遠足の時に奎はうたいものをみんな城発しおしたわあよ。(僕)本圓かい。(磯)本圓でなくおよ。たあ、遠足が来おみたら分かるちゃ。磯介は、僕が圌の蚀葉を本圓にしないでいるのが䞍満でならないようにいった。

5⃣(磯介ずの䌚話②) 僕は思いきっお蚊ねおみた。(僕)僕を陀け者にしたのも本圓に進なのかい。(磯)そうでなくおよず磯介はあきれたようにいった。(僕)あの歌を䜜ったのも進かい。(磯)そうでなくおよず磯介は匷い調子でいった。(磯)みんな進が糞を匕いおいるこずじゃが。勝の教えおくれたこずは本圓だったのだ、ず僕は今曎のように思わずにいられなかった。(僕)でも城発されお黙っおいる法はないじゃないか。団結すれば進なんかに負けないだろう。(磯)そうは簡単に行かんよず磯介は少々投げやりな調子で答えた。(磯)進はな、城発した物を、匷い連䞭に少しず぀分けおやっお、子分にしずるからな。 (磯)それにず磯介は声をひそめおいった。(磯)六幎の玚長しずる健䞀が力を持っおいる間は、誰も進には手出しできんがよ。(僕)進の埓兄にあたる奎かい。(磯)ああ、そうよ、健䞀が卒業すれば分からんけどなあ。(僕)それじゃあ、花林糖のこずを喋らなきゃよかったなあ。(磯)ほかに持っずっおも、もう喋らんこずよ。(僕)うん、そうするよ。

6⃣(åž°å®…) 僕の家の前で磯介ず別れるず、僕は重い心(傍線郚(4))を抱いお家の䞭ぞ入った。磯介のいうこずが本圓だずすれば、進をやっ぀けるこずは䞍可胜だった。そしお僕の遞択できる道は二぀しかないこずになった。進の埡機嫌を損じないようにひたすら心を぀かう道が䞀぀ず、あくたで自己に忠実に振舞い、そのために陀け者にされるこずも蟞さないずいう道が䞀぀ずであった。自分が今どちらの道を遞がうずしおいるか、僕には分かっおいた。

〈蚭問解説〉問䞀 僕は努めおこう思おうずしおいた(傍線郚(1))ずあるが、それはなぜか、わかりやすく説明しなさい。(䞉四行䞀行30字皋床)

理由説明問題(心情)。理由説明の圢匏を借りた心情説明問題である。こう思おうの内容は盎埌の──の埌にある。すなわち、僕は進ず仲のいい友達になったのだ。仲のいい友だち同士ずしお進に話をしおいるのだ。 である。ここから読み取れるのは、進ずの関係は友達関係であり(A)/それは確定したものだ(B)/ず願う心情(C)ずいうこずである。ずいうのも、䌑みをずる䞀週間前は誰も口を利いおくれなかったのに、急にみんなが芋舞の蚀葉をかけおくれ、信じられない倉りようだった(D)(本文冒頭)、そうした䞍確定な関係だったからこそ、友だち関係が今埌も続くこずを(B)、切に願うのである(C)(→よっお、努めおこう思おうずした(G))。

たた、こう思おうずしおいた堎面は、登䞋校に皆で暪に䞊んで歩く䞭心にいる進の隣に、僕の堎があるずころだった。これに぀いお、2⃣の堎面をたどるず、道幅䞀杯に進ず僕を䞭心にした完党な䞀列暪隊が組たれおいたずあり、これだったら誰に䌚っおもはずかしくない/䌯父さんに䌚っおも、矎那子のお母さんに芋られおもはずかしくないず続く。぀たり、これたで子䟛グルヌプに銎染めない自らの境遇をはずかしいず思っおいたが、今進の隣にいる自分の䜍眮を僕は誇らしく思っおいるのである(E)。以䞊より、呚囲の察応の倉化は嬉しくも戞惑いを感じおいる(D)→今は進の隣に䞊び埀き垰りする誇らしげな䜍眮にある(AE)→この関係がずっず続くこずを願う(BC)ずしお、よっお、努めおこう思おうずしたの理由にする。

<GV解答䟋>
䞀週間ぶりの登校で呚囲の察応が䞀転しお奜意的になったこずに戞惑いを芚えながらも嬉しく感じ、玚長の進の隣に䞊んで埃き垰りする誇らしげな䜍眮が、恒久的に続くものであるこずを願ったから。(90)

<参考 S台解答䟋>
陀け者にされおいるこずを恥ずかしく思っおいた朔は、病埌突然芪切にされ、陀け者にされおいたずきずの違いを痛感し、進の呜什で機嫌を損なわないよう物語を話しおいるのではなく、本圓に仲良くなれたず思うこずで、恥ずかしさを感じないでいたかったから。(119)

<参考 K塟解答䟋>
進の求めに応じお読み芚えた物語の内容を話しお聞かせるのは、圌ぞの屈埓を瀺す行為ではなく、友だちぞの奜意の蚌なのだず自分に蚀い聞かせないず、進の蚀いなりになっおいる自分のみじめな立堎が自芚されるから。(99)

問二 きたり悪そうな笑いを浮かべながら(傍線郚(2))ずあるが、この堎面における進の心情を、わかりやすく説明しなさい。(䞉四行䞀行30字皋床)

心情説明問題。きたり悪いずいうのは、他者の目を気にしお恥ずかしいずいうこずだから、そうした行為(A)、前提ずなる他者/å Ž/関係性(B)、なぜ恥ずかしいか(C)を、䞻に3⃣から具䜓化する。に぀いおは、進ははじめ、それをがかしお芁求したのだが、山田が汝(=朔)が話しずった菓子のこずよず揎護したこずで逆に、きたり悪い思いをする。぀たり、その菓子花林糖を/朔に/あからさたにねだるこず(A+)に恥じたのである。に぀いおは、道幅䞀杯に進ず僕(=朔)を䞭心にした完党な䞀列暪隊(2⃣)を組んで同玚生ず䞋校する堎面であり、手䞋のような同玚生の前(B+)でのA+ずいう行為に恥ずかしさを感じたのである。

なぜ(C) 手䞋の前で/花林糖を/朔に/ねだるず芋れば、それが朔であるこずにポむントがあるだろう。䜜䞭の芖点人物である僕=朔は、倪平掋戊争末期に東京から富山の持村に疎開しおきた児童で(前曞き)、本文䞭にも少幎文孊ぞの玠逊が瀺唆されるように、明らかに持村の同玚生ずは異なる裕犏な境遇にある。それもあっおか、䞀週間前たでは進を䞭心にした同玚生グルヌプに陀け者にされおいたが、どういうわけか進は自らの暪に僕を䞊べ、話をせがむのである。これを本問の䞻䜓である進から芋れば、戊時䞋にあり垌少な菓子は喉から手が出るほど食べたい、だが陀け者にしおきた郜䌚のボンボンにそれをあからさたに所望するのは(A+)、手䞋どもの手前(B+)もあり、なんず恥ずかしいではないか、ずたずめられる。

<GV解答䟋>
東京から疎開しおきた朔は裕犏な境遇にあり、持村では芋るこずもない高䟡な菓子を持぀。その菓子を枇望しながら、呚りの手䞋たちの手前、それを軟匱な朔に、あからさたにねだるのを恥じる心情。(90)

<参考 S台解答䟋>
朝話題に䞊った菓子を欲しがっおいるず知られるのは照れくさいので、あえお菓子ずいう蚀葉を䜿わずに持っおくるよう促したのに、山田に菓子のこずだずはっきり蚀われ、同意たで求められたので栌奜が぀かず、気恥ずかしくなっおいる。(108)

<参考 K塟解答䟋>
芋知らぬ郜䌚の菓子を食べおみたい欲望に駆られるものの、朔にはただあからさたに懇願も呜什もできないので、曖昧にしお芁望したのに、自分の意を汲む仲間の説明によっおその工倫が台無しになり、圓惑しおしたっおいる。(102)

問䞉 しばらく黙っおいた(傍線郚(3))ずあるが、それはなぜか、この埌の察話も参考にしお説明しなさい。(䞉四行䞀行30行)

理由説明問題(心情)。理由説明の圢匏を借りた心情説明問題である。4⃣の堎面、心情の䞻䜓は磯介。集団ず別れ、朔ず二人になったのを機に先に話題に出た花林糖を所望するが、もちろんだよ/ほかにも遠足の時に君に䞊げようず思っおいるものがあるずいう朔の気前よさに、そうかず蚀いしばらく黙るのであった。その理由は、この埌の察話も参考にずいう蚭問の誘導に乗り、気前よく高䟡な菓子をふるたおうずする朔に(A)/しようずしたが/ためらわれたから(C)ずなるであろう。ずは、みんな進に取られおしたうぞ/遠足の時に奎はうたいものをみんな城発しおしたわあよから、進の真の意図を教えお譊戒を促すこずである。

あずは、およびの理由を加えお、より分厚い解答にする。の理由は、(進は)少々な欲な奎じゃないがなず吐き捚おるようにいったずあるように、進の理䞍尜なやり口に䞍満があった(R1)、その䞀方あたりに無防備で邪気のない朔に、぀い譊戒を促したくなった、ずいうこずだろう。の理由は、5⃣で磯介自身が述べるように、進の支配䜓制はその埓兄の健䞀が力を持っおいる間は少なくずも磐石であるこず、それを思えば進に逆らうこずは磯介にずっおも恐怖であった(R2)、よっおためらわれたのである。R1→→→R2→ずたずめる。

<GV解答䟋>
普段の進の理䞍尜なやり口に䞍満もあり、気前よく高䟡な菓子をふるたおうずする邪気のない朔に、進の真の意図を教えお譊戒を促そうずしたが、進に逆らうこずになるのを恐れ、ためらわれたから。(90)

<参考 S台解答䟋>
朔が進には蚀わなかった菓子を䞊げるず蚀っお奜意を瀺しおくれたので、朔のために、匷欲に菓子を取り立おる進に甚心するよう忠告しおやりたかったが、進が皆を狡猟に支配し、操るこずを知っおいる磯介には、自分の身を心配しおのためらいもあったから。(117)

<参考 K塟解答䟋>
仲間から菓子を巻き䞊げおきた進のやり口を知らず、自分ぞの芪愛の情から䞍甚意に別の珍しい菓子に぀いおほのめかす朔に、こっそり真実を告げおやりたいが、そうすれば自分が䞍利な立堎になる危険があるため、躊躇したから。(104)

問四 重い心(傍線郚(4))ずは、朔のどのような心情をいうのか、くわしく説明しなさい。(䞉四行䞀行30字)

心情説明問題。磯介の話を聞き、磯介ず別れ䞀人垰宅した時の僕の心情である。最埌のパヌト6⃣を参照する。僕に遞択できる道は二぀→進の埡機嫌を損じないようにひたすら心を぀かう道(A)/あくたで自己に忠実に振舞い、そのために陀け者にされるこずも蟞さないずいう道(B)→自分が今どちらの道を遞がうずしおいるか、僕には分かっおいたずある。もちろん、僕が遞がうずしおいる道はである。その根拠は、5⃣の進の話で明かされた珟実だ。぀たり、進が同玚生に働きかけ、たた六幎生の埓兄の力を埗お、少なくずも圓面は䞇端の支配䜓制を築いおいるずいう珟実である。

以䞊より、磯介の話によるず進は銖尟䞇端に支配䜓制を築いおいる→その䞭でを遞ぶ気抂はない→ならばを遞ぶしかない→その未来を思い暗柹ずする心情ずたずめる。

<GV解答䟋>
磯介の話から進が銖尟䞇端に支配䜓制を築いおいるず分かり、自己に忠実に振舞っお皆に陀け者にされる気抂もなく、進の機嫌を損なわないよう専心するしかない自分の未来を思い、暗柹ずする心情。(90)

<参考 S台解答䟋>
進は匷い連䞭を子分にし、力を持぀埓兄もいお皆を支配しおいるずいう磯介の話が本圓なら、進をやり蟌めるのは䞍可胜であり、進の機嫌を取り続けるか、陀け者にされおも自分の気持ちに埓っお立ち向かうしかないが、自分は前者を遞ぶだろうず憂う぀に思う心情。(120)

<参考 K塟解答䟋>
進の巧劙で暪暎な振る舞いず、それを打ちのめすこずができない事情を打ち明けられた以䞊、媚びぞ぀らっお服埓するにせよ、自らに正盎にいようずしお仲間はずれになるにせよ、窮地に陥るず考え、深い憂慮にずらわれおいる。(103)