目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問䞀 (挢字)
  3.  蚭問二 (接続語遞択)
  4. 蚭問䞉 傍線郚(1)に぀いお、筆者が蛮勇ず衚珟する理由に぀いお本文に即しお100字以内で説明せよ。
  5. 蚭問四 傍線郚(2)垂盎的な音ず傍線郚(3)氎平的な音に぀いお、その察比に留意しながら、本文に即しお100字以内で説明せよ。
  6. 蚭問五 傍線郚(4)に぀いお、なぜ人間の声が兞瀌や法手続きにおける䞍可欠の芁玠ずされおいたのか、本文に即しお100字以内で説明せよ。
  7. 蚭問六 傍線郚(5)文字化された䞭䞖の文孊䜜品にノァリアントが無数にあるのはなぜか、本文に即しお90字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は池䞊俊䞀音ず声から立ち珟れる新たな歎史像。
①②段萜。掋の東西を問わず、前近代瀟䌚においおは、コミュニケヌションは音ず声(ず身振り)によっおなされた。文字が䞀般に䜿われるようになった近珟代においおも、音ず声による䌝達は重芁である。しかも、それらは、メッセヌゞを䌝えるためだけにあるのではなく、しばしば特別な情動的䟡倀をもっお䜜甚しおきた。各時代・地域の人びずが、身の回りの音や声を聎いお、䞖界や自分をどう感じ理解しおいたのか、その様態は歎史の進展ずずもに倉化しおいこう。是非ずも過去の䞖界の音や声の意味ず効果を蘇らせおみたいものだ。しかし音や声は、その堎で発せられるず埌には䜕も残らない。だから、こうした音や声の䞖界は、歎史孊の課題のなかでも䞀番厄介な郚類に属する。私たちずしおは、文字に蚘された音・声関連の情報をもずに、音響の想像空間を䜜り䞊げるしかないのだろうし、領域暪断的に音・声の行方を远いかけ、過去の人びずの音のコミュニティヌあるいは集合的な蚘憶の䞖界に入り蟌んでみる蛮勇が必芁だろう(傍線郚(1))。ただし、䟋倖的に声が聞こえる文曞史料が残っおいるこずもある。(15䞖玀むタリアの説教筆録の䟋)。

③④段萜。産業化以前の時代においおは、恒垞的な隒音が少なく、たこずに静かだったこずだろう。そうした静謐な地の䞊に、ほんの僅かな音でも発せられるず、くっきり描かれた図のように、鮮明に耳朶を打぀。(䟋)。だが、これら環境音のほかに、ペヌロッパでは䞭䞖から近代にかけお、信号音、すなわち特定のメッセヌゞを送るための音を出す手段が非垞に発達しおいた。ひず぀は叩いお鳎らすもの、ずくに鐘ず鈎、もうひず぀は、息を吹き入れお鳎らすラッパ類であった。

⑀⑊段萜。それぞれの地域・時代においお、それらの信号音はコヌド化・慣習化されながら、子䟛が物心぀く頃には重芁なメッセヌゞず感じられるようになるのであり、その音の文法の理解は、その内郚にいる者の必須の条件ずもなっおいた。か぀おは、聖俗の暩力者が、こうした信号音を発する暩限を独占し、公衆に向けお䞊から䞋に䞀方的に鳎らされるのが通䟋であった。だが、その暩力ず結び぀いた垂盎的な音(傍線郚(2))の䜿甚を逆手に取っお、音の暩力秩序を倉曎する堎面もずきにはあった。さらには、貎族間の䞀皮のモヌルス信号ずしおの角笛の音、蟲民局の連垯感を醞成する倪錓の音などは、日垞の舞台で個人的・盞互的な関係を結び補匷する氎平的な音(傍線郚(3))ず看做されよう。いずれにせよこれらの信号音は、そのずきどきの時間・空間芳念ず䞍可分で、支配・被支配関係や瀟䌚的結合関係を制定する特別な力を備えた音なのであり、近代においおもこの音の力ぞの信仰は生き぀づけおいた。

⑧段萜。ロヌマ・カトリック教䌚、ずりわけカテドラルを建蚭するに圓たっおは、音の奥深い反響にも意を甚いた。そしお聖歌隊の声、オルガンの音が、信埒たちを䞀䜓化させるずずもに、音・声を介しお䞀人䞀人を神ず結び぀けたのである。

⑚⑩段萜。実は前近代のペヌロッパでは、(楜噚の音だけでなく)人間の声も、兞瀌や法手続きにおける䞍可欠の芁玠(傍線郚(4))ずしおコヌド化されおいた。たた戊堎での鬚の声、修道院での呪いの声 など、じ぀にさたざたな堎面においお、声は人知を越えた超自然的ないしは魔術的な力を発揮したのである。こうした声の聖性ないし魔術性ぞの信仰は、なぜ生たれたのであろうか。それは文字にもずづかない声の文化が優勢だった時代には、声に出された蚀葉が、たさに肉䜓から、力を備えた音ずしお発出し、いわば物理的に觊知しうるモノずしお、人々に圱響を及がし、偉倧な力が宿っおいるず実感されたからだろう。それは、人々を高揚させ興奮に導き、矀れなす身䜓を同調させ、集団の行いぞず動員する。ミサや秘蹟執行、戎冠匏においお、決たった短い蚀葉を実際に声に出しお叫ぶこずによっお、はじめお儀匏は正圓に完遂されるず考えられおいたのである。

⑪段萜。文孊䜜品も、声による䌝達が䞻流だったずきには、その声の䞍可思議な力の圱響を免れない。テクストは぀ねに生成途䞭のものであっお、歌い朗誊する挔者の声のみが、その郜床その堎で、それに䟡倀ず暩嚁を䞎えたのである。物語や詩の構造を守っおさえいれば、即興的芁玠も排陀されない。文字化された䞭䞖の文孊䜜品にノァリアントが無数にある(傍線郚(5))のは、こうした理由からである。

⑫段萜。音ず声の歎史孊は、ただほずんど未開拓であり、掋掋たる前途が広がっおいる。消えおしたった音ず声を蘇らせるこずができたら、どこたで曞き連ねおも平面的な文字の矅列からは芋えおこない、立䜓的な歎史像が私たちの前に立ち珟れるにちがいない。

〈蚭問解説〉蚭問䞀 (挢字)

a ペミガ゚ b 厄介 c 挑 d アれミチ e 頻繁 f ケむケン g ツム h ヒツゞョり i 完遂 j 掋掋

蚭問二 (接続語遞択)

A ã‚Š B ã‚€ C ア D ã‚š

蚭問䞉 傍線郚(1)に぀いお、筆者が蛮勇ず衚珟する理由に぀いお本文に即しお100字以内で説明せよ。

理由説明問題。問い方が傍線郚自䜓蛮勇が必芁だろうの理由を聞くのではなく、蛮勇ず筆者が衚珟する理由を聞いおいるのに留意する。前者なら蛮勇が必芁な理由を答えればよいが、埌者なら蛮勇ずした筆者の衚珟意図を答えなければならない。なぜを勇ずしながら蛮ずみなすのか。
は盎前郚で文字史料や集合的蚘憶から/歎史䞊の音や声を再珟しようずする/歎史孊の詊み。その音や声は、①段萜より、情報䌝達のみではなく特別な情動的䟡倀(→時代・地域に固有の䞖界や自己ぞの認識)を含むものだから、は歎史孊にずっお意矩深い挑戊である(よっお勇)。
しかし、②段萜の冒頭より、音や声はその本質からしお、その堎で発せられるず埌に䜕も残さないものであるから、はただ珟実性を䌎っおいない(よっお蛮)。それでもなお筆者は、最終⑫段萜にもあるように、のあり方に今埌の歎史孊の方向性をみるのである。

<GV解答䟋>
情報の䌝達のみならず時代・地域に固有の䞖界芳や自己認識を含有する音や声を、文字史料や集合的蚘憶から再珟しようずする詊みは、歎史孊には意矩深いが、発した堎で消える音声の性質により未だ珟実性に乏しいから。(100)

<参考 S台解答䟋>
音や声はその堎で発せられるず埌には䜕も残らないので、過去の䞖界の音や声の意味ず効果を蘇らせるために、文字に蚘された音・声関連の情報や過去の人びずの集合的な蚘憶に察する、思いきった行動が求められるから。(100)

<参考 K塟解答䟋>>
音や声は発せられた瞬間に消えおしたうのに、過去の䞖界の音や声の意味ず効果を蘇らせようずしお、文字に蚘された情報をもずに、あえお想像力によっお過去の人びずの音の集合的な蚘憶の䞖界に入りこもうずするから。(100)

蚭問四 傍線郚(2)垂盎的な音ず傍線郚(3)氎平的な音に぀いお、その察比に留意しながら、本文に即しお100字以内で説明せよ。

内容説明問題。察比に留意しながらずあるので、その前提ずしお䞡者が同じカテゎリヌにあるこずを瀺した䞊で、その違いを端的に瀺す。

たず、䞡者は信号音の分類であるので、信号音に぀いおの説明を求める。⑀⑊段萜より、(ペヌロッパ䞭䞖の)地域・時代/(固有の)時間・空間芳念ず䞍可分/コヌド化・慣習化/集団に重芁なメッセヌゞ(を送る)を拟いたずめる。その䞊で、⑥⑊段萜より、前者(垂盎的な音)は䞊から䞋に䞀方的/支配・被支配関係を制定、埌者(氎平的な音)は(階局内郚の)個人的・盞互的な関係を保障/瀟䌚的結合関係を制定を拟いたずめる。

<GV解答䟋>
欧州䞭䞖の地域・時代においお、各々に固有の時間・空間芳念ず結び぀き暗号化・慣習化され集団内に重芁な情報を䌝える信号音の䞭で、前者は支配・被支配の䞀方的関係を、埌者は階局ごずの瀟䌚的結合関係を確認する。(100)

<参考 S台解答䟋>
前者は、暩力者から公衆ぞ向けお䞀方的に䜿われ、支配・被支配関係を制定する力を持぀音だが、埌者は、日垞の堎で同じ階局の者同士のやりずりで個人的・盞互的に䜿われ、瀟䌚的結合関係を制定する力を持぀音である。(100)

<参考 K塟解答䟋>
垂盎的な音は、暩力者から公衆に向けた呜什ずしお䞀方的に鳎らされ、支配・被支配関係を匷化するが、氎平的な音は、同じ階局の者同士のやりずりや連垯感の醞成などのために鳎らされ、瀟䌚的結合関係を補匷する。(98)

蚭問五 傍線郚(4)に぀いお、なぜ人間の声が兞瀌や法手続きにおける䞍可欠の芁玠ずされおいたのか、本文に即しお100字以内で説明せよ。

<GV解答䟋>
生成途䞭にあるテクストを歌い朗誊する挔者の声こそが、それに䟡倀ず暩嚁を䞎えるのであり、物語や詩の構造を守る限りにおいお、その声を介した文孊は即興的芁玠にも開かれたものであったから。(90)

<参考 S台解答䟋>
テクストは぀ねに生成途䞭の仮のもので、歌い朗唱する挔者の声のみが䟡倀ず暩嚁を䞎えた䞭䞖の文孊䜜品は、物語や詩の構造を守っおさえいれば、即興的芁玠も排陀されないたた䌝えられたから。(89)

<参考 K塟解答䟋>
声の超自然的な力を実感できた時代には、テクストは぀ねに仮のものずされ、挔者がそれを朗誊する際に、物語や詩の構造さえ守れば、その郜床その堎で即興的芁玠を付け加えるこずができたから。(89)

蚭問六 傍線郚(5)文字化された䞭䞖の文孊䜜品にノァリアントが無数にあるのはなぜか、本文に即しお90字以内で説明せよ。

理由説明問題。文字化された䞭䞖の文孊䜜品にノァリアント(泚䞀぀の䜜品でありながら、郚分的に異なる衚珟をも぀本)が無数にあるのは、こうした理由によるず傍線郚より続くわけだから、玠盎にこうしたを具䜓化すればよい。
ポむントは぀。テクストは生成途䞭の仮のもの/歌い朗誊する挔者の声のみが、それに䟡倀ず暩嚁を䞎える、その声を介した文孊は/物語や詩の構造を守るならば/即興的芁玠も排陀されない(開かれた構造)。が前提ずなり、盎接的理由のに぀ないで解答ずした。

<GV解答䟋>
生成途䞭にあるテクストを歌い朗誊する挔者の声こそが、それに䟡倀ず暩嚁を䞎えるのであり、物語や詩の構造を守る限りにおいお、その声を介した文孊は即興的芁玠にも開かれたものであったから。(90)

<参考 S台解答䟋>
テクストは぀ねに生成途䞭の仮のもので、歌い朗唱する挔者の声のみが䟡倀ず暩嚁を䞎えた䞭䞖の文孊䜜品は、物語や詩の構造を守っおさえいれば、即興的芁玠も排陀されないたた䌝えられたから。(89)

<参考 K塟解答䟋>
声の超自然的な力を実感できた時代には、テクストは぀ねに仮のものずされ、挔者がそれを朗誊する際に、物語や詩の構造さえ守れば、その郜床その堎で即興的芁玠を付け加えるこずができたから。(89)