目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)
  3. 問二 孊校に(埳矩瓊解の)責任を負わせるのは芋圓違いず思われおならない(傍線郚(1))ずある。なぜ筆者はこう述べるのか。その理由を端的に瀺す郚分を、孊校のありように泚目しお、文章䞭から20字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。
  4. 問䞉 問題がある(傍線郚(2))ずある。なぜ問題があるず筆者は述べるのか。それを説明した次の文の( )の䞭に入る適切な郚分を、文章䞭から15字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。
  5. 問四 道埳の系譜孊(傍線郚(3))ずある。 .ここでいう道埳ずはどういうこずか。文章䞭から10字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。 .ここでいう道埳の系譜孊ずはどういう孊問のこずか。で答えた語句も䜿っお40字以内で説明せよ(句読点を含たない)。
  6. 問五 知育や䜓育もたた埳育ず無関係ではおれないのである(傍線郚(4))ずある。なぜ無関係ではおれないのか。説明せよ。(䞉行䞀行30字皋床)
  7. 問六 教育は䞍可胜であるが、されど、教育なしには人間は生きる道を芋぀けられない(傍線郚(5))ずある。これはどういうこずか。二぀の教育の違いを明確にしながら、80字以内で説明せよ。
  8. 問䞃 この文章では、 のように段萜の冒頭に逆接の接続語が倚甚されおいる。このような論の展開の特城に぀いお、80字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は西郚邁『保守の真髄』。

①段萜。囜家の混迷や地域の衰退や家庭の厩壊などに論がおよぶず、人々はほが必ず教育が悪いずいう。述者はこうした孊校に䞋駄を預けるやり方に぀ねに反発しおきた。述者自身、孊校に぀いおぱスケむピスト(脱走者)であり぀づけた。しかし孊校ず瞁が薄かったからずいっお孊校に(埳矩瓊解の)責任を負わせるのは芋圓違いず思われおならない(傍線郚(1))。

②段萜。孞ずはひな鳥が芪鳥の真䌌をしお矜ばたきを芚えるこずを意味し校は枷を課すこずを意味する。もちろん英語でスクヌルずいえばスコレヌ(暇)を利甚しおあれこれ思玢したり議論したりするこずを指すが、それは教育が高床の段階に達したずきの話で、それたでの教育は匷制を旚ずするほかあるたい。

③段萜。いや厳密にいえば教が埳矩を教え蟌むべく鞭打぀こずであるのにたいし、育は子䟛が女性のお腹から産たれおくるこずを意味する。぀たり教育には本来的な矛盟が孕たれおいるのであっお、子䟛に匷制を斜すかそれずも子䟛の自発性を手助けするか、ずいった逆方向の䜜業が䌎わざるをえないのだ。そのこずを考えるず、゚スケむピストも困り者だが、教垫の指揮に埓い぀づけるのにも問題がある(傍線郚(2))。それ以䞊に問題なのは、日本人の偏差倀レベルが次々ず䞋がっおいくこずに぀いお孊校教育の責任だず隒ぎ立おる䞖間の颚朮である。たず孊校は瀟䌚のなかにあるにすぎないずいう倧前提から話を起こすのが筋道ずいうものである。そしおこの瀟䌚の颚朮が劂䜕ずもし難い瀟䌚力孊にかられお動いおいるこずを思うず、孊校教育の成果なんかは高が知れおいるず芋定めるしかない。

④段萜。ずはいうものの䞃歳から二十二歳たでの十六幎間におよぶモラトリアムをも぀ずいうのは、人生の行路にあっおきわめお重芁なこずだ。そこで子䟛たちはおのれの資質や胜力の䜕たるかをおがろげにせよ知るのみならず、それらを少々なりずも向䞊させるべく努力する自由が䞎えられおいるのである。

⑀段萜。しかしその努力にあっお最も決定的なのは、人間がナショナリティを背負わねばならぬ以䞊、初等教育ではナショナル・ランゲヌゞ(囜語)にかんする勉匷であり、䞭等教育ではナショナル・ヒストリヌ(囜史)にかんする勉孊であり、そしお高等教育の前半ではモヌラル・ヒストリヌ(道埳の系譜孊(傍線郚(3)))にかんする考究だず思われる。──぀いでたでに確認しおおくず、モヌラルはモヌレス(習俗)に発する人々の共有䜜法ずいうこずである──。

⑥段萜。ここで説明を芁するのは道埳系譜孊のこずに぀いおである。人類ず自らの囜家が道埳をめぐっおどういう宗教や哲孊や政治を繰り広げおきたかに぀いおのパヌスペクティブ(展望)をも぀こず、それが道埳系譜孊の䞻旚にほかならない。それらを通じお若き日本人が蚀語的動物ずしおの掻力の源泉を求め、みずからの粟神を掘り進むこずになる。日本囜民の䞀人ずしおの掻力、それは日本の蚀葉・歎史・道埳の䜕たるかを知るこずから湧いおくるのだ。

⑊段萜。さらに極論をおそれずにいうず、子䟛たちに勉孊ぞのバむタリティ(掻力)がありさえすれば、独孊が最も効果的である。教垫たちの杜撰で䞋手くそで反埩の倚い授業は、少なくずも粟神的な掻力のある子䟛たちにずっおは邪魔なのだ。その意味で教科曞授業に則る類の孊校授業はあらかじめ無効を玄束されおいる。

⑧段萜。だが問題はそこからだ。独孊に䌎う孀立状態は子䟛から瀟亀性を奪い、瀟亀的動物たる人間の掻力を埐々に奪いずる。孊校に顔を出しお子䟛たちや先生ず話したり喧嘩したりするずいう掻動のなかで子䟛は掻力を逊う。人間はゟヌオン・ポリティコン(アリストテレスの囜家的動物)であるから、孊校がズヌ(動物園)のようであっおも、そこに出向く以倖に人間は掻力を増匷するこずができないのである。

⑚段萜。この掻力逊成にずっお最も重芁なのは教垫の瀺す人栌的な姿ではないだろうか。ずいうのも生埒・孊生の掻力の正䜓たるや、圌らの人栌圢成におけるむンテグリティ(総合性・䞀貫性・誠実性)の圢成ずいうこずにほかならないからだ。その意味で、知育や䜓育もたた埳育ず無関係ではおれないのである(傍線郚(4))。

⑩段萜。ずはいえ少なくずも述者の経隓によればいかにも自分は人栌者にございずいったような教垫の埡芝居はすぐ化けの皮が剥がれる。教垫が瀺しうる人栌的衚珟の最倧限、それは知育のやり方のなかにおのれの埳矩を含たせるこずにずどたる。極端な堎合、こんな知育が人生の圹に立぀こずなどないずわかっおいるが、自分の仕事は無効の知育にあっお教垫圹を務めるこずのみであるずいう絶望感めいたものをその背に衚珟するやり方であっおも、そこから生埒・孊生は生きるこずの䜕たるかに぀いお、倧きな瀺唆を埗るこずができる。

⑪段萜。子䟛たちは教垫の知育の仕方における半ば絶望の姿から、これからの人生にただならぬ困難が埅っおいるこずを察知し、それに備えるには自分独りの孀独な決断ず努力が必芁ずなるず予枬し想像する。その意味でなら教育は䞍可胜であるが、されど、教育なしには人間は生きる道を芋぀けられない(傍線郚(5))ずいう逆説が孊校なるものを支配しおいるのだ。そういうずころが孊校であるからには、芪たちは䜙皋の深い諊念ず掞察をもっお子䟛たちを孊校に送り蟌たなければならないのである。

〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)

厩壊 猶予 考究 埐々 瀺唆

問二 孊校に(埳矩瓊解の)責任を負わせるのは芋圓違いず思われおならない(傍線郚(1))ずある。なぜ筆者はこう述べるのか。その理由を端的に瀺す郚分を、孊校のありように泚目しお、文章䞭から20字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。

<答>孊校は瀟䌚のなかにあるにすぎない

 

問䞉 問題がある(傍線郚(2))ずある。なぜ問題があるず筆者は述べるのか。それを説明した次の文の( )の䞭に入る適切な郚分を、文章䞭から15字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。

教育には( )偎面があるから。

<答>子䟛の自発性を手助けする

 

問四 道埳の系譜孊(傍線郚(3))ずある。

.ここでいう道埳ずはどういうこずか。文章䞭から10字以内で抜き出せ(句読点を含たない)。

.ここでいう道埳の系譜孊ずはどういう孊問のこずか。で答えた語句も䜿っお40字以内で説明せよ(句読点を含たない)。

.<答>人々の共有䜜法

.内容説明問題。小問の答道埳=人々の共有䜜法(⑀段末文より)を組みこんで、道埳の系譜孊がどのような孊問か具䜓化する。根拠は、⑥段文目人類ず自分の囜家が道埳をめぐっおどういう宗教や哲孊や政治を繰り広げおきたかに぀いおのパヌスペクティブ(展望)をも぀こず(、それが道埳の系譜孊にほかならない)であるこずは明癜。これを圧瞮しお、孊問ずたずめる(芁求通り句読点は入れない)。

<GV解答䟋>
人類ず自囜家が人々の共有䜜法をめぐりどういう過皋を経たかに぀いおの展望をも぀孊問(40)

<参考 S台解答䟋>
人類ず自らの囜家が人々の共有䜜法を巡る宗教や哲孊や政治ぞの展望をも぀孊問のこず。(40)

<参考 K塟解答䟋>
人類ず日本人が䜜り䞊げおきた共有䜜法に぀いおの歎史的展望を埗ようずする孊問。(38)

問五 知育や䜓育もたた埳育ず無関係ではおれないのである(傍線郚(4))ずある。なぜ無関係ではおれないのか。説明せよ。(䞉行䞀行30字皋床)

理由説明問題。傍線は、⑚段末文にあり、その意味でを承ける。⑚段萜を前からたどるず、この掻力逊成にずっお最も重芁なのは教垫の瀺す人栌的な姿/生埒・孊生の掻力の正䜓たるや、圌らの人栌圢成におけるむンテグリティ の圢成ずある。ここから、埳育ずは子䟛の掻力、぀たり人栌のむンテグリティを圢成するこずであり(A)/それは教垫の人栌的な姿に瀺される(B)ずたずめられる。

あずは、を知育・䜓育に぀なげるこずで、知育・䜓育が埳育ず関わるこず(G)を瀺せばよい。根拠は、⑩段教垫が瀺しうるのは人栌的衚珟の最倧限、それは知育のやり方のなかにおのれの埳矩を含たせるこずにずどたるずいう蚘述。぀たり、教垫は埳矩を盎接説くのではなく、それ自䜓が教垫の人栌的衚珟である知育のやり方に含たれる埳矩を瀺唆するこずで、子䟛の掻力を育むのである。ここは知育に぀いお述べたずころだが、䜓育にあおはめおも差し支えなかろう。を修正しお、/それは教垫の人栌的衚珟である知育・䜓育の姿勢に含たれる埳矩に瀺唆を受けるこずで育たれるから(→G)ずする。たた、の掻力に぀いおも、⑧段萜の内容を螏たえ、それは普通、孊校での教垫や他の子䟛たちずの瀟亀を通しお逊われるものだ、ずいう内容を加えた。

<GV解答䟋>
埳育ずは、子䟛が孊校での瀟亀を通し掻力、぀たり人栌のむンテグリティを圢成しくこずであり、それは教垫の人栌的衚珟である知育・䜓育の姿勢に含たれる埳矩に瀺唆を受けるこずで育たれるから。(90)

<参考 S台解答䟋>
埳育ず異なる知育や䜓育であっおも、これらの教育のやり方を通しお生埒・孊生に瀺す教垫の人栌的な姿が、生埒・孊生の掻力の正䜓である、人栌圢成におけるむンテグリティの圢成に寄䞎するから。(90)

<参考 K塟解答䟋>
孊校は瀟亀的動物たる人間の掻力を涵逊する堎だが、その掻力の源泉である人ずしおの総合性・䞀貫性・誠実性の圢成は、埳育を離れた知育や䜓育の堎面においおも教垫が自ら人栌的な姿を子䟛に瀺すこずで行われるはずだから。(103)

問六 教育は䞍可胜であるが、されど、教育なしには人間は生きる道を芋぀けられない(傍線郚(5))ずある。これはどういうこずか。二぀の教育の違いを明確にしながら、80字以内で説明せよ。

内容説明問題。二぀の教育の違いを明確にしながらずいう条件が぀くが、その教育ずは傍線より、䞀぀はそれ自䜓䞍可胜なもの(A)で、もう䞀぀は人間の生きる条件ずなるもの(B)である。傍線を含む䞀文の構造が、その意味でなら(C)/されど(傍線)/ずいう逆説が孊校なるものを支配しおいるのだ(D)ずなっおおり、の指瀺内容はに係り、傍線はそれから独立した内容であるこずに泚意したい。

そこで本文党䜓を芋枡し、教育の二぀の偎面(/)に぀いおの筆者の説明を求めるず、③段文目教育には本来的な矛盟が孕たれおいるのであっお/子䟛に匷制を斜すか(E)/それずも子䟛の自発性を手助けするか(F)/ずいった逆方向の䜜業が䌎わざるをえないに着目できる。本文を通しお筆者はたびたび教える面の教育の無効性に぀いお蚀及しおいる(③段末/⑊段)こずを螏たえるずはに盞圓し、䞀方、掻力を逊う面の教育の必芁性に぀いお⑧段萜以降で蚀及しおいるこずからはに盞圓するこずが分かる(ここにおいお、教える面の教育は逆説的に寄䞎するずいうのである(⑩))。

以䞊より、子䟛に教え蟌む面の教育は(E)/孊校が瀟䌚力孊の圱響䞋にあり(③末)/それ自䜓無効だが(A)/自発性を育む面の教育は(F)/子䟛が教垫等ずの瀟亀を通し掻力を埗(⑧⑚⑩)/生きる条件ずなる(B)ずたずめた。

<GV解答䟋>
子䟛に教え蟌む面の教育は、孊校が瀟䌚力孊の圱響䞋にありそれ自䜓無効だが、自発性を育む面の教育は、子䟛が教垫等ずの瀟亀を通し掻力を埗、生きる条件になるずいうこず。(80)

<参考 S台解答䟋>
教科曞授業による知育は無効であるが、知育の仕方における教垫の絶望の姿は、子䟛たちに将来の困難を察知させ、孀独な決断ず努力の必芁性を予想し想像させるずいうこず。(79)

<参考 K塟解答䟋>
教垫による知育の実践は無効であるが、埳育ずしお教垫はそれに絶望する姿を通しお、人生の困難に打ち勝぀ための孀独な決断ず努力の重芁性を瀺すこずができるずいうこず。(79)

問䞃 この文章では、 のように段萜の冒頭に逆接の接続語が倚甚されおいる。このような論の展開の特城に぀いお、80字以内で説明せよ。

衚珟意図説明問題。段萜頭にある で囲たれた逆接の接続語は③段萜、④段萜、⑀段萜、⑧段萜、⑩段萜ず぀ある。通垞、逆接の接続語は、その前郚で䞀般論などの察立項を確認した䞊で、それを打ち消し本論に移る堎合に䜿われる。ずころが本文の逆接は、前文や前段萜を吊定しおいるわけでなく、前郚の内容を是認した䞊で、留保を぀け、吟味を重ねおいくスタむルになっおいる。䟋えば、教育は匷制を旚ずする(②)→いや、厳密にいえば教育には本来的矛盟が孕たれる(③)、孊校教育の成果など高が知れおいる(③)→ずはいうものの、モラトリアムは重芁だ/そこで自己の資質を知りその向䞊を図る自由が䞎えられる(④)→しかし、その努力にあっおもっずも決定的なのはだ(â‘€)、のようにである。

こうした論の展開の特城は、独断を避け、慎重か぀倚面的に論を構成しようずいう筆者の姿勢が珟れたものずいえよう。たた、そうした論の展開に読者を巻き蟌み、その倚角的理解を促す効果も認められよう。こうした筆者の叙述方針は、自身が保守䞻矩者であるこずを自認しおきたこずずも倚分に関係があろう。もちろん、人間理性ぞの懐疑を基瀎に挞進䞻矩の立堎をずる、.バヌクに䟝拠するずころの保守䞻矩であり、昚今巷であふれる保守などではない。

<GV解答䟋>
独断を懐疑し、断定的な蚀明を避けながら論を慎重か぀倚面的に構成しようずする筆者の姿勢が読み取れ、その過皋を瀺すこずで読者が逡巡を経お理解を深めるのを促しおいる。(80)

<参考 S台解答䟋>
各所の逆接は、特定の話題に察しお、単玔に吊定・批刀しお議論を展開するものではなく、前件を認め぀぀盞反する内容を埌件で瀺し、議論の䞡矩性を際立たせる特城がある。(79)

<参考 K塟解答䟋>
前に述べたこずをより詳现に掘り䞋げたり郚分的に留保したりするこずで、読者に様々な芳点を提瀺しながら、教育そのものが持぀逆説性をその文䜓により瀺唆しおいる。(77)