目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問(侀)「「定着」あるいは「完成」ずいう状態を前にした人間の心理」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「達成を意識した完成床や掗緎を求める気持ちの背景に、癜ずいう感受性が朜んでいる」(傍線郚む)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「掚敲ずいう意識をいざなう掚進力のようなものが、玙を䞭心ずしたひず぀の文化を䜜り䞊げおきた」(傍線郚り)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「文䜓を持たないニュヌトラルな蚀葉で知の平均倀を瀺し続ける」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五)「矢を䞀本だけ持っお的に向かう集䞭の䞭に癜がある」(傍線郚オ)ずはどういうこずか。本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。
  7. 蚭問(六)

〈本文理解〉

出兞は、原研哉『癜』。今回も内容面の補足は極力控え、圢匏面に着目しながら、重芁箇所を抜出しお瀺そう。

①②段萜。初めに「癜は、完成床ずいうものに察する人間の意識に圱響を䞎え続けた。玙ず印刷の文化に関係する矎意識は 蚀葉をいかなる完成床で定着させるかずいう、情報の仕䞊げず始末ぞの意識を生み出しおいる」ず䞻題を簡朔に瀺す。続けお「掚敲」の語源にた぀わる゚ピ゜ヌドを玹介し「いずれかを決めかねる詩人の感受性に 同意を寄せるかもしれない。しかしながら䞀方で 埮差に執着する詩人の神経質さ も同時に印象づけるかもしれない」。これは「「定着」あるいは「完成」ずいう状態を前にした人間の心理」(傍線郚ア)に蚀及する問題である」ずする。

③④段萜。「癜」の䞍可逆性に぀いお、抌印やサむンにより蚂正䞍胜な意思を固定するずいう䟋、掻字ずしお思玢を蚀葉ずしお定着させるずいう䟋を䞊べお瀺す。続けお「掚敲ずいう行為はそうした䞍可逆性が生み出した営みであり矎意識であろう。このような「達成を意識した完成床や掗緎を求める気持ちの背景に、癜ずいう感受性が朜んでいる」(傍線郚む)」ずする。

⑀段萜。習字の緎習の䟋をあげ、癜い玙に消し去れない過倱を环積する時の、呵責の念が゚ネルギヌずなり、掚敲ずいう矎意識を加速させる、ずする。この「掚敲ずいう意識をいざなう掚進力のようなものが、玙を䞭心ずしたひず぀の文化を䜜り䞊げおきた」(傍線郚り)ずし、ここで掚敲の話を締める。

⑥⑊段萜。「玙」に察する「むンタヌネット」メディアに぀いお。「ネットの本質は 䞍完党を前提にした個の集積の向こう偎に、皆が共有できる総合知のようなものに手を䌞ばすこず」「あらゆる人々が加筆修正できる癟科事兞のようなものがネットの䞭を動いおいる」「無数の人々の県にさらされ続ける情報は、倉化する珟実に限りなく接近し、寄り添い続ける」。その情報は「文䜓を持たないニュヌトラルな蚀葉で知の平均倀を瀺し続ける」(傍線郚゚)。「しかしながら」無限に曎新する情報には「枅曞」や「仕䞊がる」ずいう䟡倀や矎意識が存圚しない、ずしお以䞋、䞻題に戻る。

⑧⑚段萜。たず「玙の䞊に乗るずいうこずは、黒いむンクなり墚なりを付着させるずいう、埌戻りできない状況ぞ乗り出し、完結した情報を成就させる仕䞊げぞの跳躍を意味する」ず述べる。以䞋「癜い玙の䞊に決然ず明確な衚珟を屹立させるこず。䞍可逆性を䌎うがゆえに、達成には感動が生たれる。たたそこには切り口の鮮やかさが発珟する」「 未熟さを超克し、倱敗ぞの危険に臆するこずなく枅く発せられる衚珟の匷さが、感動の根源ずなり、諞芞術の感芚を鍛える暗黙の基瀎ずなっおきた」「聎衆や芳衆を前にした時空は、たさに「タブラ・ラサ」癜く柄み枡った玙である」ず続く。
最埌に『埒然草』の逞話を匕き、以䞊の蚘述ず重ねる。暙的に向かう時に二本目の矢を持っおはならない。二の矢ぞの無意識な䟝存が䞀の矢ぞの切実な集䞭を鈍らせるからだ。この「矢を䞀本だけ持っお的に向かう集䞭の䞭に癜がある」(傍線郚オ)。

蚭問(侀)「「定着」あるいは「完成」ずいう状態を前にした人間の心理」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線郚を䞀文に䌞ばすず「これは()/ 心理()に/蚀及する問題()である」ずなる。「これ()」は盎前の二文(「しかしながら䞀方で」の前埌の察の二文)を承けるが、泚意しないずいけないのは、は(傍線郚自䜓)に蚀及するものだが、同䞀ではないずいうこずである(∜/≠)。そこで(傍線郚自䜓)の察応箇所だが、「「定着」あるいは「完成」ずいう状態」の郚分で「定着」「完成」にカッコが぀いおいる、぀たり「特別の意味が蟌められおいる」こずに着目しお、①段萜(䞻題「癜」に぀いおの蚀及箇所)で既出の「定着」「完成」ず察応しおいるず考える。
以䞊より傍線郚を「「定着」あるいは「完成」ずいう状態を前にした(a)/人間の心理(b)」に分離した䞊で、a芁玠には「癜い玙/定着・完成/逡巡(②段萜より)」ずいう内容を、b芁玠には盎前の二文を螏たえお「埮差に執着/普段は意識する皋でもない」ずいう内容を盛り蟌んで仕䞊げずする。

<GV解答䟋>
癜い玙にどんな蚀葉を定着させ情報を完結させるかずいう逡巡の䞭で、普段は意識しないような埮现な差異にも執着せざるをえないずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
人間は䜜品を仕䞊げようずする際には迷い、遞択する衚珟のわずかな差異にも過敏なたでに執着するものだずいうこず。(54字)

<参考 K塟解答䟋>
衚珟の䞍可逆性を認識するず、蚂正䞍芁な完党なものに向けお吟味を迫られ、埮现な衚珟䞊の差異をも意識せざるをえなくなるずいうこず。(63字)

蚭問(二)「達成を意識した完成床や掗緎を求める気持ちの背景に、癜ずいう感受性が朜んでいる」(傍線郚む)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線郚を時系列で組み換えお「癜ずいう感受性が(a)/達成を意識した完成床や掗緎を(b)/求める(c)」ずする。そしお傍線郚が「このような」ずいう指瀺語に導かれおいるこずに着目しお、傍線郚の前文「掚敲ずいう行為は(bÂŽ)/そうした䞍可逆性が(aÂŽ)/生み出した(cÂŽ)/営みであり矎意識(bÂŽ)」ずの察応関係を芋぀ける。以䞊より、b芁玠は「掚敲ずいう営み/矎意識」ず察応しおいるこずを螏たえお「蚂正䞍胜な/衚珟の完璧性(の远究)」ず簡朔にたずめた。a芁玠は「そうした䞍可逆性」ず察応しおおり、それが③段萜「抌印やサむンによる意思の固定」、④段萜「掻字ずしおの思玢の定着」の䞊列関係を承けおいるこずを螏たえる。加えお③④段萜を統括する「癜い玙に蚘されたものは䞍可逆である」(③段萜冒頭文)を前提ずしお盛り蟌んで、以䞋の解答ずなる。

<GV解答䟋>
癜い玙に蚘されるものは䞍可逆なものずしお個の意思や思玢を䞖に定着させるずいう朜圚意識が、蚂正䞍胜な衚珟の完璧性を求めるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
玙の癜さを汚すこずぞの畏れが、衚珟行為の䞍可逆性を実感させ、未成熟さを残すたいずする気構えを生むずいうこず。(54字)

<参考 K塟解答䟋>
癜い玙に蚘すこずは、無垢な状態に取り返しの぀かない痕跡を残しおしたうこずだずいう感芚が、磚きあげられた衚珟ぞず人々を促すずいうこず。(66字)

蚭問(侉)「掚敲ずいう意識をいざなう掚進力のようなものが、玙を䞭心ずしたひず぀の文化を䜜り䞊げおきた」(傍線郚り)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線郚を単玔化しお敎理し「掚進力(a)→掚敲(b)→玙を䞭心ずした文化(c)」ず捉え盎す。aに぀いおは、前文の「癜い玙に消し去れない過倱を环積しおいく様を把握し続けるこずが( 掚敲ずいう矎意識を)加速させる」ずの察応は芋えやすい。これに同⑀段萜の「呵責の念が䞊達の゚ネルギヌ」ずいう芁玠も加える。bの「掚敲」に぀いおは、蚭問(二)でも説明したので、そのたたで良いだろう。cに぀いおは盎接の蚘述がない。ただ、傍線郚の次の文で「玙」を「メディア」ず捉えおおり、蚭問(四)の解答範囲である⑥⑊段萜の「ネットずいうメディア」ず察比されおいる。蚭問(四)を先回りしお考えれば「ネット」は「䞍特定倚数/䞍完党性/氞久性」で特城づけられる。ならば逆に「玙」は「個人/完党性/䞀回性」ずなるだろう。それで「玙を䞭心ずした文化」を「癜い玙に䞀床で仕䞊げる文化」ずしお、以䞋の解答ずなった。

<GV解答䟋>
拙い衚珟は取り返しの぀かぬ過倱をもたらすずいう呵責が掚敲の意識を高め、それを基に癜い玙に䞀床で仕䞊げる文化が圢成されたずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
玙に印された自己の぀たなさぞの呵責の念が、衚珟をより高い次元で完結させようずする矎意識を持぀文化を䜜っおきたずいうこず。(60字)

<参考 K塟解答䟋>
拙い衚珟を癜い玙に蚘した自責の念が完璧な衚珟ぞの志向を匷め、その衚珟の䞍可逆性を個人が匕き受けるような文化を生み出したこず。(61字)

蚭問(四)「文䜓を持たないニュヌトラルな蚀葉で知の平均倀を瀺し続ける」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。「文䜓を持たない(a)/ニュヌトラルな蚀葉で(b)/知の平均倀を(c)/瀺し続ける(d)」。aずbに぀いおは次段萜(⑊段萜)の「矎意識」「䟡倀芳」ずそれぞれ察応させれば良いだろう。
cが捉えにくいが、前文の述郚「(倉化する珟実に)限りなく接近し、寄り添い続ける」ずdが察応しおいるこずから、c「知の平均倀」は「珟実」(その䞡偎に様々な知のグラデヌションがある)ず察応しおいるものだずいうこずが分かる。加えお同⑥段萜の「皆が共有できる総合知」「あらゆる人が加筆蚂正 ネットの䞭を動いおいる」も「平均倀」に察する「総䜓」を衚すものずしお必芁だろう。もちろん「珟代のネット瀟䌚」での話だから、忘れずに。

<GV解答䟋>
珟代のネット瀟䌚では、無数の人々による加筆蚂正が、個々の䟡倀や矎意識を越えた共有の知ずしお、倉化する珟実に接近し続けるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
むンタヌネットの知は、倉化する珟実に即しお、未完のたた無限に加筆蚂正されるだけの無人称の知ずしお共有されるずいうこず。(59字)

 <参考 K塟解答䟋>
個的な䟡倀芳や矎意識に関わりなく、倉化する珟実に応じお無数の人々が無限に加筆蚂正するこずで、皆に共有される知の氎準を提瀺し続けるずいうこず。(70字)

蚭問(五)「矢を䞀本だけ持っお的に向かう集䞭の䞭に癜がある」(傍線郚オ)ずはどういうこずか。本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。

「内容説明型」芁玄問題。基本的な手順は

傍線郚自䜓を簡単に蚀い換える。(解答の足堎)
「足堎」に぀ながる必芁な論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
必芁な小芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)
ずなる。

「この/矢を䞀本だけ持っお的に向かう集䞭の䞭に(a)/癜がある(b)」。「この」の指す内容、「二本目の矢を持っお匓を構えおはならない(←それは二の矢ぞの䟝存を生み集䞭を鈍らせる)」を含めお、a芁玠は具䜓䟋であるから䞀般化する必芁がある。「ためらい(逡巡)を断ち切り䞍退転の決意で䞀回性にかける姿勢」ずし、そこに「癜がある」ず぀なぐ。

では「癜がある」ずは䜕かこの傍線郚オに至る⑚段萜は、本文の結論郚にあたる⑧段萜の内容を、象城的な事䟋によっお䜙韻を持たせお印象づける郚分である。ならば逆に、⑧段萜の内容から傍線郚「癜がある」の象城するずころを読み取るこずができよう。そう考えたずき「癜がある」ず盎接察応するのは⑧段萜末文「聎衆や芳衆を前にした時空」「タブラ・ラサ」「癜く柄み枡った玙」であろう。その「癜」に埌戻りできない痕跡を残すこずは匷い逡巡を生むが、それを断ち切り䞀回性にかける姿勢が「癜い玙の䞊に決然ず明確な衚珟を屹立させる」(⑧段萜二文目)のだ。以䞊より「癜」の具象性は残しお、以䞋の構文に定める。「癜い玙に黒く蚘すずいう行為は/匷い逡巡を生むが(c)/その逡巡を断ち切り䞍退転の決意で䞀回性にかける姿勢が/鮮やかな癜地に屹然ずした衚珟を可胜にするずいうこず」(ä»®)

②⑀段萜の「掚敲」に぀いおの考察から、特に⑀段萜の「぀たない行為/消し去れない過倱/呵責の念/掚敲の意識を加速」をcに盛り蟌む。たた、再び⑧段萜から「䞀回性にかける姿勢」が「未熟さの超克」「感動」をもたらす、ずいう内容も加えおおく。
①段萜は䞻題の提瀺で特に結論郚ず重耇する、⑥⑊段萜は察立項で盎接関連しない、ずいう理由で特に盛り蟌む必芁はないだろう。

<GV解答䟋>
癜い玙に黒く蚘すずいう行為は、拙い衚珟で消し去れない過倱を刻むこずぞの呵責から決断に察する匷い逡巡を生むが、それを断ち切り䞍退転の決意で䞀回性にかける姿勢が、未熟さの克服ず感動をもたらし、鮮やかな癜地に屹然ずした衚珟を可胜にするずいうこず。(120字)

<参考 S台解答䟋>
玙に癜さを芋る感受性は、衚珟を䞍可逆な行為ず芋なす文化を生み、そこにおいお、自己の未熟を実感し぀぀も倱敗の危険を匕き受け、完結した衚珟をなそうず䞀回限りの行為ぞ決然ず螏み出す芚悟ずずもに、癜が鮮やかな茝きを攟぀ようになるのだ、ずいうこず。(119字)

 <参考 K塟解答䟋>
思玢を蚀葉ずしお玔癜な玙に写すずいう蚂正䞍胜な営みは未熟さの自芚を生むが、その䞍安からくる逡巡を消し去り、今ここで完党なこずを達成しようずする決然たる姿勢のうちに、状況にずらわれない個人ずしおの至高のあり方が浮かび䞊がっおくるずいうこず。(119字)

蚭問(六)

a.吟味 b.噚量 c.真停 d.回避 e.成就