今年度の全体像

 昨年同様に多量の英文を処理しなければならないことに加えて、設問には様々な工夫が施されていた。全体的に昨年よりも難化した。

 

1.問題量  
昨年同様、ブログや広告などの日常的な素材から、物語文、論説文に至る多様な英文が出題された。英文の総語数も昨年並みで6,000語を超えている。一部にイギリス英語が使用されているが、解答に影響を及ぼすことはない。

 

2.出題形式  
問題形式は大問6つの構成で、設問数39、解答数49と昨年とほぼ変化はない。  各設問は4つの中から適切なものを1つ選ぶものがほとんどだが、4つの選択肢を出来事の順に並べかえる問題が2題、適切なものを複数選ぶ問題が3題、それぞれ出題された。

 

3.設問分析  
 昨年同様、様々な読解力を試す問題が出題された。今年度の問題には様々な工夫が施されており、昨年よりも解答に時間のかかる問題が増加した。 
 最も多いタイプは、選択肢と英文中の特定箇所を対応させる問題であった。今年度は昨年よりも素材文の語彙・表現を巧妙に言い換えた選択肢が増加したうえに、解答の根拠となる箇所が本文中に分散しているため必要な情報を見つけにくい問題も多く出題された。
 また、英文中の特定箇所から導き出せる内容を推測させる問題や、特定箇所の要約を要する問題、英文全体の主張を元に考える問題が増加した。

 

対策

 今年度も含め過去3回の英語リーディングの傾向を踏まえれば、多様な英文を素早く読み解く力と、目的(設問・選択肢の要求)に合わせた解答の際の臨機応変な対応力が求められている。

 

1.読解のナチュラルスピードを上げる  設問の解答に必要な力が、身につけるべき読解力である。

①選択肢と特定箇所を対応させる  正確に両者の意味を把握する必要があるので、最低でも高校の教科書レベルの語彙力と、文法構造に則した英文の読み方をマスターしなければならない。試験では多量の英文を処理しなければならないので、帰り読みせず、書かれている順に読んで理解できる読み方を身につけること。これはリスニングにも良い効果をもたらす。

 

②推測を必要とする問題  ある英文が表す意味を日本語に置き換えるだけではなく、その内容が当てはまる具体的場面を想像したり、自分の言葉で抽象化するといった、主体的取り組みが必要。

 

③要約を必要とする問題  英文全体のテーマと筆者の主張を理解し、どのような展開でそれが論じられているのかを把握しながら読み進める訓練が必要。慣れないうちは段落ごとの展開を自分に説明できるか試す程度でもよい。練習用の素材としてはセンター試験の長めの論説文が最適。

 

④出来事順など、流れを問う問題  この種の問題は英文中にある出来事の中でも、比較的重要な出来事(つまり、主題や主張に関わる内容)から出題される傾向にある。したがって、物語文であれ論説文であれ、大まかな展開を把握できる読解力があれば、すべての選択肢の内容に合致する部分を英文中から闇雲に探さなくてすむ。練習用の素材としてはセンター試験の物語文や長めの論説文が最適。

 

 上記①〜④が実践できれば、同じ箇所を何度も読み返さず通読できるようになり、試験時間に十分に間に合うスピードで英文を読むことができるようになっている。要するに、正確で丁寧な読解が速読に繋がるということ。

 

2.設問の要求を見抜き臨機応変な対応力を鍛える

 今年度の試験が昨年度と英文の総語数と設問数が変わらない中で難化した主要因は、①要約を含む選択肢の言い換えの巧妙さ、②解答の根拠となる箇所が分散し特定しづらかったことが挙げられる。

 

①言い換えに慣れよう  ほぼすべての選択肢が素材文からの言い換えをベースに作られていることを前提としよう。有効な対策としては、日常的に読む英文中の語句・表現の言い換えを意識的に探して、些細なものでも見つけられるようにしよう。さらに、共通テストとセンター試験の過去問題を通して、実際にどの程度の言い換えが施されているかを体感することも重要。解答に際しては間違いを含む選択肢を除外していく消去法も有効な手段となるので、それも合わせて練習しておくこと。

 

②内容理解と情報検索を両立させよう  英文を読み始める前に、設問のリード文や図表に目を通しておくことが有効。設問のリード文は英文中のどこに対応する箇所があるかを指定していることが多いので、多くの場合、必要な情報を迷わず探すことができ、時間の節約になる。  英文にグラフ、イラスト、スライドなどの資料が添付されている場合は、それらが内容理解や解答の手掛かりとなるので、事前に目を通し、適宜確認しながら英文の内容把握と同時に、設問に必要な情報の検索をする練習が必要である。

 

大問別分析

第1問(配点ー10 設問数ー5)  
A・Bともに日常的題材の素材が出題された。Aは「2つの公演」についてのハンドアウト、Bは「夏季英語キャンプ」についてのウェブサイトを題材にした問題であった。解答に必要な情報を素早く見つけ出す力が必要。比較的解きやすい問題であったが、Bでは複数の情報をまとめたものが正解となる問題が2題あり、昨年度よりもやや解答に戸惑う。

 

第2問(配点ー20 設問数ー10)  
Aは「スマートシューズの新製品」の紹介ウェブ広告、Bは「通学時間の活用」についてのレポートを題材にした問題であった。A、Bともに設問に必要な情報は見つけやすいが、正解の選択肢が大幅に言い換えられているものや、仮定法の知識と推測を要するものが出題され、昨年よりも難易度は上がった。 

 

第3問(配点ー15 設問数ー5)  
Aは「キャンプの準備」に関するニュースレター、Bは「家での冒険ごっこ」に関するブログが題材であった。英文の分量が昨年よりも減少し、設問も解きやすくなった。Bに出来事の正しい時系列を答える問題が出題された。

 

第4問(配点ー16 設問数ー5)  
「効果的な学習法」に関する2つの記事が題材であった。2番目の記事は、1番目の記事の内容を踏まえて展開していくので、全体として読みやすい。設問は語句レベルの細かな情報を問うもの、2人の筆者の主張に関するものなどが出題された。設問ごとにミクロな視点とマクロな視点を切り替えて、様々な情報を読み解く力が要求されている。

 

第5問(配点ー15 設問数ー5)  
昨年同様、英文に添付された資料の空欄を埋める問題であった。昨年度までの伝記から、今年は物語文に変わった。昨年度よりも読みやすく、設問全体を通しても解答に必要な情報が見つけやすい。問5は適切なものを2つ選ぶ問題であったが、物語文の要約となる選択肢が正解となるため解きやすい。

 

第6問(配点ー24 設問数ー9)  
A、Bともに説明文からの出題で、文章に添付された資料の空欄を埋めていく問題であった。Aは「コレクション」に関する文章が題材であった。与えられた資料から解答に必要な情報は探しやすものの、選択肢はどれも言い換えられているため判断に多少の時間を要する。Bはプレゼンテーションの資料中の空欄を埋める問題だった。「クマムシ」に関する文章からの出題であった。設問が文章の内容順に解答できないため、必要な情報を探し出すのに苦労する。また、問4では文章全体の内容理解を問う問題、問5では推測を要する問題が出題され、全体として難度が高い。