目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉 問䞀「埅぀間を惜しんで、メルノィルの原文に移行しようずいう気には残念ながらならない」(傍線郚A)ずあるが、それはなぜか。20字以内で説明せよ。
  3.  問二 「優れた翻蚳ずは、どうしたっお『翻蚳調』を垯びる」(傍線郚B)ずいう理由は䜕か。文䞭の蚀葉を甚いお30字以内で説明せよ。
  4. 問䞉「改名に螏み切り、『むカレ』君ずしお登堎しおもらうこずにした」(傍線郚C)ずあるが、䜜者がそのようにしたのはなぜか。60字以内で説明せよ。
  5. 問四「翻蚳は文孊の第二の生であり耇数の生なのだ」(傍線郚D)ずあるが、それはどのようなこずか。50字以内で説明せよ。
  6. 問五「翻蚳を読む愉しみもたた、そんな運動感芚に぀ながっおいるはずだ」(傍線郚E)ずあるが、それはどのようなこずか。80字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は野厎歓翻蚳、このたえざる跳躍。
①段萜。䞖界文孊を遍歎する愉しみは、翻蚳の助けを借りなければ味わうこずは䞍可胜である。たずえば、僕(筆者)は『癜鯚』の新蚳を読んでいる。䞊巻を䞀息に読み終え、なぜ党巻揃いで出しおくれないのだずうらめしく続刊の到着を埅っおいるずころだ。

②段萜。埅぀間を惜しんで、メルノィルの原文に移行しようずいう気には残念ながらならない(傍線郚A)。蚳曞を堪胜するだけで満足しおしたい、英語力をのばす必芁をさしお芚えない。そればかりか優れた蚳曞に接するずき、自分は翻蚳文孊を読んでいるのだずいう意識がどこか心地よい刺激ずなっお䜜品の面癜さを増し、読曞の悊びをひずきわ掻き立おおくれる気さえする。どういうこずなのだろう。

③段萜。(匕甚)。ご芧のずおり、蚳文には、安易な意蚳を排し、孊究的蓄積の䞊に立っお原兞を忠実に蚳したものに違いないずいう感觊が備わっおいる。硬いず芋える郚分があるかもしれないが、それが驚くべき自圚で力感にあふれる日本語による蚳業であるこずはすぐに理解される。解釈に螏み蟌んだ泚も倧いに楜しみながら、手軜な文庫本にこれほどの知的興奮を䞎えおもらえるこずに感謝するばかりだ。

④段萜。(匕甚)。

⑀段萜。こうした文章のありさたを翻蚳調で䞍自然だずいう人もいるず思う。しかしながら優れた翻蚳ずは、どうしたっお翻蚳調を垯びる(傍線郚B)ものではないだろうか。単にぎこちないずか、読みにくいずいうこずではない。たさに癜鯚のごずき匷烈な躍動ず生呜力をも぀異囜の名䜜を捕獲しようずする闘いは、圓然のこずながら海面にさたざたな痕跡を残すはずだ。異蚀語ずの぀ばぜり合いをずおしお逞しい筋肉を浮き䞊がらせるかのような日本語の勇姿に僕は惹かれおしたう。

⑥段萜。逆に䞀介の翻蚳者ずしお考えおみれば、怪物的な巚鯚でなくおも、䞀匹の猫を蚳すこずにも翻蚳のささやかな愉しみは存圚する。

⑊段萜。拙蚳『ある倜、クラブで』。最埌のずころで登堎する、すぐにかんしゃくを起こす暎れん坊の黒猫は、クラむマックスで目を瞠るような存圚感を瀺す。蚳者ずしおは、その黒猫の掻躍をぜひずも匕き立おおやりたい。

⑧段萜。なんおいう名前だっけ。その名はフランス語でDingo、もずもずは気の觊れたずいう圢容詞。しかしこれを発音するずダンゎ、黒猫の団子では可哀そうではないか。改名に螏み切り、むカレ君ずしお登堎しおもらうこずにした(傍線郚C)。

⑚段萜。同䞀の猫なのに名前が違う。しかし倧切なのは、それが同じ䞀匹の猫であるずいう事実だ。同䞀性を䜜り出すのは原理的に䞍可胜かもしれないが、自分の読み取ったダンゎ像をできうるかぎり忠実に再創造しおむカレになったのだ。

⑩段萜。名前を倉えお別の囜で生掻を営む。それは猫以䞊に文孊にこそふさわしいこずであるはずだ。曞かれた囜の蚀葉の根っこに深く結び぀いおいながら、䞍思議にも軜々ず離陞しお別の土地に──さらには別の時代に──しっかりず根づく力が文孊には備わっおいる。逆に蚀えば、文孊は翻蚳を必然的に匕き起こす。しかも、枯れかかっおいるかに芋えた詩が翻蚳によっお瑞々しく蘇るずいう事態も、決しお皀ではない。翻蚳は文孊の第二の生であり耇数の生なのだ(傍線郚D)。

⑪段萜。だが、翻蚳は䞍正確であり、正解は原著のみだろうず正論を吐く人もいる。たさにその通り。『癜鯚』の冒頭の䞀句(Call me Ishmael)が今たでどれほど倚様な日本語蚳を生んできたこずか。原文ずの同䞀性を求めながら、結果がばらばらずは䜕事か。しかしそれこそが翻蚳のダむナミズムだず匷匁したい。翻蚳は運動であり、たえざる跳躍である。跳躍のスリルは他に代えがたいものである。翻蚳を読む愉しみもたた、そんな運動感芚に぀ながっおいるはずだ(傍線郚E)。人間の蚀語が耇数であるがゆえに可胜になる生の飛躍(゚ラン・ノィタル)。翻蚳ずはそれをたっぷりず経隓させおくれる営みなのだず思う。

〈蚭問解説〉問䞀「埅぀間を惜しんで、メルノィルの原文に移行しようずいう気には残念ながらならない」(傍線郚A)ずあるが、それはなぜか。20字以内で説明せよ。

理由説明問題。20字内の指定なので本質的芁玠だけで構成する。②段萜そればかりか以䞋、優れた蚳曞に接するずき、自分は翻蚳文孊を読んでいるのだずいう意識が心地よい刺激ずなっお(䜜品の面癜さを増し)。翻蚳文孊にカッコが぀いおいるこずに泚意しよう。通垞蚳曞は原䜜に付随するものず芋られるが、ここで筆者には固有の文孊ずしお意識され、それが心地よい刺激を䞎えおいるずいうこずだろう。

䜜品の面癜さを増しは付加的芁玠だから陀倖。なお、翻蚳で原䜜の内容自䜓が面癜さを増したずいうわけではない。だっお、筆者はそのために英語力を究めお原䜜を読んだのではなく、内容を比范しようがないのだから。ここは翻蚳圢匏ぞの興奮ずしお蚘述を留めるべきだ。

<GV解答䟋>
原䜜にはない翻蚳固有の刺激を埗たいから。(20)

<参考 S台解答䟋>
翻蚳ならではの面癜さを満喫できるから。(19)

<参考 K塟解答䟋>
原文の魅力を高める蚳曞に満足するから。(19)

問二 「優れた翻蚳ずは、どうしたっお『翻蚳調』を垯びる」(傍線郚B)ずいう理由は䜕か。文䞭の蚀葉を甚いお30字以内で説明せよ。

理由説明問題。文䞭の蚀葉を甚いおずのリク゚ストだが、普通文䞭の蚀葉を甚いお解答を䜜るはずだから、䜕のこずやら。保留。
傍線郚以䞋の文が単にぎこちないずか いうこずではない。/たさに癜鯚のごずき匷烈な躍動ず生呜力をも぀異囜の名䜜を捕獲しようずする闘いは 海面にさたざたな痕跡を残すはずだ(A)ず続く。ここから翻蚳調ず察応するのが闘いの痕跡だずいうこずが分かる。この痕跡を理由ずしお翻蚳調になめらかに぀なぐためには、少し説明を足す必芁があろうが、30字内の指定だから、そこは痕跡でよいずいうこずだろう。
埌は闘いの痕跡を具䜓化する。そこでずその次の文異蚀語ずの぀ばぜり合いをずおしお逞しい筋肉を浮き䞊がらせるような日本語の勇姿の比喩的な衚珟を参考にしお盞互に個性のある蚀語間の眮換に䌎う苊闘の痕跡ずする。それが衚出するから翻蚳調を垯びるのである。

<GV解答䟋>
盞互に個性のある蚀語間の眮換に䌎う苊闘の痕跡が衚出するから。(30)

<参考 S台解答䟋 
孊究的蓄積に基づき、苊闘しながら異蚀語を忠実に翻蚳するから。(30)

<参考 K塟解答䟋>
原兞に即した異蚀語ずの闘いが、日本語に新たな痕跡を残すから。(30)

問䞉「改名に螏み切り、『むカレ』君ずしお登堎しおもらうこずにした」(傍線郚C)ずあるが、䜜者がそのようにしたのはなぜか。60字以内で説明せよ。

理由説明問題。䜜者が黒猫のDingoを改名した(G1)理由ず、それを『むカレ』ずした(G2)理由。根拠ずしお⑚段萜ラスト自分の読み取ったダンゎ像を(A)/できうるかぎり忠実に再創造しおむカレになったのだを芋぀けるのは容易。ただ、これだけではG1の理由にはなっおも、G2぀たりなぜその名前がむカレでなければならないのかには着地しない。
では、なぜむカレなのか。たず発音通りのダンゎではず合わない。そこで気の觊れたずいう原矩に戻っおむカレずしたのである。
加えおでは座りが悪い(衚珟が間接的である)。読み取ったダンゎ像ずは぀たり(黒猫の)目を瞑るような存圚感(⑊段萜)である。それをできうるかぎり忠実に䌝えるため改名する必芁があったのだ。

<GV解答䟋>
察象の存圚感を極力忠実に䌝えるため、原語の発音がそれに沿わない以䞊、原語の意味に即しお名前を再創造する必芁があったから。(60)

<参考 S台解答䟋>
原語の発音通りでは印象が倉わるので、自分の読み取った意味内容を極力忠実に衚珟するには名前を再創造する必芁があったから。(59)

<参考 K塟解答䟋>
「ダンゎ」ずいう名前の原音では違和感があるので、名前の原矩に即しお、自分の読み取った黒猫の像を再創造したかったから。(58)

問四「翻蚳は文孊の第二の生であり耇数の生なのだ」(傍線郚D)ずあるが、それはどのようなこずか。50字以内で説明せよ。

内容説明問題。第二の生(A)ず耇数の生(B)を蚀い換える。根拠は傍線前のしかもの前埌。芁玠がしかもの前曞かれた囜の根っこに深く結び぀いおいながら 別の土地に 別の時代に 根づくず察応する。芁玠がしかもの埌ろ枯れかかっおいるかに芋えた詩が翻蚳によっお瑞々しく蘇るず察応する。これらを簡朔に蚀い換え、傍線ず逆になるが(→)の順で解答するべき。䞀床翻蚳されたものが原䜜に反響するのだから。

<GV解答䟋>
翻蚳は、原語を基盀ずしながら時空を越えお倚様な味わいを届け、原䜜にも新たな䟡倀をもたらすずいうこず。(50)

<参考 S台解答䟋>
文孊は、翻蚳により読みかえられ様々な別の文化に根づくこずで、䜜品ずしお新たな䟡倀を持぀ずいうこず。(49)

 <参考 K塟解答䟋>
翻蚳は、文孊を別の土地や時代に䜕床も根づかせお再生させ、倚様な衚珟を生み続ける営為であるずいうこず。(50)

問五「翻蚳を読む愉しみもたた、そんな運動感芚に぀ながっおいるはずだ」(傍線郚E)ずあるが、それはどのようなこずか。80字以内で説明せよ。

内容説明問題。傍線郚を因→果に倉換し、そんな運動感芚(A)→翻蚳を読む愉しみ(B)の順で説明する。
に぀いおは、傍線の前郚原文ずの同䞀性を求めながら/翻蚳は運動であり、たえざる跳躍であるを参考に翻蚳においお/蚳者は/原䜜に忠実であろうずしながらも/母語ぞの眮換にあたり/垞に跳躍を詊みるずする。
に぀いおは、傍線自䜓の衚珟もたた ぀ながっおいるず傍線盎埌の『生の飛躍』(※ベルク゜ンの甚語)を参考に、読曞も蚳者の飛躍をたどるこずを愉しみずするず捉える。しかしこれではただ薄い。
ここで党䜓を芖野に眮いた時、冒頭から⑀段萜たでは翻蚳を読む立堎からの蚘述だった(⑥段萜よりは蚳す立堎で、最埌で読む立堎に戻る)。そこから③段萜驚くべき自圚で力感にあふれる日本語による蚳業/知的興奮を䞎えおもらえるを参考にし、より぀なげお蚳者の飛躍をたどり/知的興奮を埗るこずが/翻蚳を読む醍醐味(愉しみ)だずした。筆者は、蚳曞の内容はずもかく、翻蚳の圢匏的性栌(たえざる跳躍)にメタレベルの愉しみ(知的興奮)を芋出しおいるのだ。

<GV解答䟋>
翻蚳においお蚳者は原䜜に忠実であろうずしながらも母語ぞの眮換にあたり垞に飛躍を詊みるものだが、その飛躍をたどり知的興奮を埗るこずが翻蚳を読む醍醐味だずいうこず。(80)

<参考 S台解答䟋>
翻蚳は原文に忠実であり぀぀、各翻蚳者が二蚀語間の隔たりを倧胆に螏み越えおいく営みであり、蚳者が詊みたその飛躍を远䜓隓するこずも翻蚳を読む愉しみだずいうこず。(78)

 <参考 K塟解答䟋>
各蚳者が原文ずの同䞀性を远求し぀぀も翻蚳は倚様であり、その際二蚀語の隔たりを倧胆に乗り越えようずする蚳者の様態を感埗する所に、翻蚳を読む愉しみがあるずいうこず。(80)